「けっしてひとりでは見ないでください」
ぼくが中学生だった1977年、毎日のようにテレビから流れてきたCMのキャッチコピーは今でも鮮明に覚えています。しかし『サスペリア』を観るのは、あれから40年以上も経った今回がはじめて。
イタリア映画だからなのか、日本のジワるホラーとも、ハリウッドの仰々しいホラーとも、一味違ったビジュアル重視の作品となっています。そしてストーリーは、ダンジョンで魔王を(あっさり)倒して脱出するクソゲーRPG仕立て? と言えるかも知れません。
【主なキャスト・作品概要】
- スージー・バニヨン:ジェシカ・ハーパー
- タナー先生:アリダ・ヴァリ
- ブランク副校長:ジョーン・ベネット
- サラ:ステファニア・カッシーニ
- 監督:ダリオ・アルジェント
- 公開(日本): 1977年6月25日
- 上映時間:99分
- 配給:東宝東和
『サスペリア』あらすじ
一流のバレリーナを目指すスージー・バニヨンは、ニューヨークからドイツのバレエ名門校に留学する。しかしそこは「黒の女王」と呼ばれた伝説の魔女へレナ・マルコスと、彼女の信者たちが牛耳る悪魔の館だった。
スージーがこの学校に着いた日から、生徒や職員が相次いで奇妙な死に方をする。そしてなぜかスージーは体調を崩し、強制的に寄宿舎に入れられる。副校長のブランクや教師のタナーたちの言動に不審を感じたスージーは、毎夜いずこへと姿を消すタナーたちの行く先を突き止めるが、そこには……。
感想(ちょっとネタバレあり):赤い赤い映像がイタリアン?
「けっしてひとりでは見ないでください」というキャッチコピーはこの年の流行語にもなりましたが、映画の成績は今ひとつ。
というのも、この年は話題作が多かったため、『サスペリア』は日本での興行成績はなんとかベスト10に入ったという程度でした。
【1977年 日本映画市場の興行ランキング】※単位:億円
- キングコング(30.9)
- 八甲田山(25.0)
- 人間の証明(22.5)
- 遠すぎた橋(19.9)
- 八つ墓村(19.8)
- カサンドラクロス(15.3)
- トラック野郎 天下御免(12.8)
- ロッキー(12.1)
- サスペリア(10.9)
- トラック野郎 度胸一番星(10.9)
とりあえず興行収入10億円の大台には乗ったので、まずまずの成功と言えるかも知れません。同じ年の『エクソシスト2』の6.7億円に比べると健闘したかと。
ちなみに2位『八甲田山』の「天は我々を見放した」、5位『八つ墓村』の「祟りじゃ〜!」もテレビCMで流行語になりました。
当時の映画はテレビCMが興行収入を大きく左右しましたから、テレビ受けするキャッチコピーの有無は今よりずっと大切な存在でした。
さて、今作の『サスペリア』ですが、全体的に赤を基調にした映像となっています。建物の外壁も内壁もライティングも赤、赤、赤です。イタリアだからでしょうか?
ストーリー的には、まあ今の感覚で観るとB級というよりC級? 謎解き要素がセールスポイントなら、もう少し凝った筋書きにしてほしかったところです。
もしこれがハリウッド映画なら、ヒロインに恋する男性が一緒に謎を解き、その最中に魔女たちの手によってShiんでしまう、という筋書きになったかもしれません。
何はともあれ、映像の美しさにこだわるあまり、肝心の怖さが今ひとつという本末転倒感が拭えません。
作品中に幽霊が映っていると話題に!
当時、『サスペリア』は本物の幽霊が映り込んでいると話題になりました。冒頭3分半ほど経ったタクシーの車内で、ドライバーの背後に口を大きく開けた男の顔が映り込んでいます。
これはアルジェント監督の本人によるヤラセだそうですが、当時は一般の映画ファンがそんなことまで知らないので、宣伝効果はバッチリでした。
今観ると、それほど怖くもないホラー映画ですが、もし中学生の頃に映画館で観たら、今よりはもう少し「怖っ!」と思えた……かな?
とは言え、「世界一、映像が美しいホラー映画」として一部には人気の今作、機会があれば一度ご覧いただき、あなた自身の評価を下してください。