シリーズ2作目となる『ALWAYS 続・三丁目の夕日』は、時間軸を前作から4ヶ月後の昭和34年に設定。
失踪したヒロミのその後や茶川の芥川賞へのチャレンジ、鈴木家で預かることになった美加、ロクの幼なじみ武雄などが登場。
さらに鈴木は戦友の牛島と、トモエは昔の恋人の山本と再会するなど、多彩な人間関係が縦横に紡がれており、物語に深みと広がりが加わっています。
興行収入は45.6億円と、前作の32.3億円を大きく上回りました。
【主なキャスト・スタッフ】
- 茶川竜之介:吉岡秀隆
- 鈴木則文:堤真一
- 鈴木トモエ:薬師丸ひろ子
- 鈴木一平:小清水一揮
- 星野六子(ロク):堀北真希
- 石崎ヒロミ:小雪
- 古行淳之介:須賀健太
- 川渕康成:小日向文世
- 武雄:浅利陽介
- 鈴木大作:平田満
- 鈴木美加:小池彩夢
- 監督・脚本・VFX:山崎貴
- 原作:西岸良平
- 配給:東宝
- 公開:2007年11月3日
- 上映時間:146分
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』あらすじ
「鈴木オート」は親戚の大作(平田満)が事業に失敗したため、一人娘の美加を預かることになった。
お嬢様育ちでワガママな美加は庶民の暮らしが気に入らず一平とケンカばかりしていたが、にぎやかな鈴木家の暮らしは寂しさに耐えていた美加の心を少しずつ解きほぐしていく。
その一方、淳之介が給食費を滞納していると聞きつけた実父の川渕は、人並みの生活をさせられないなら今度こそ淳之介を引き取ると、茶川に最後通牒を突きつけた。
茶川は生活を立て直すため一念発起で芥川賞に応募し、無事に最終選考に残った。ところが、受賞には選考委員の接待が必要だと言われ、周囲の連中は詐欺師に有り金を騙し取られてしまった。
感想:考察(ネタバレありまくり)
今作の時代設定となった昭和34年はメートル法の施行や、民間人だった美智子さまと明仁親王(当時)のご成婚などがあり、「トランジスタ・グラマー」という言葉も流行しました。
劇中でも踊り子の梅子(手塚理美)から「美智子さま」という言葉が出たり、タバコ屋のおばさん(もたいまさこ)がロクのことを「トランジスタ・グラマー」と言うシーンが出てきます。
しかし、全体的にはそうした世相にはほとんど触れず、あくまでも夕日町三丁目界隈を中心とした狭いコミュニティーの中で話が進んでいきます。
それでも前作に比べると主要なキャラにまつわる人間関係が加えられ、前作よりも広がりのある内容となりました。
ただ、それらの人間関係をすべて拾っては収集がつかなくなるので、今回はあえて3つのポイントに注目します。
冒頭はゴジラが暴れまくるシーン。しかし、その必然性は?
冒頭はゴジラが東京の街並みを破壊し、「鈴木オート」を潰された則文がサイヤ人ばりに怒髪天を衝く怒り様です。
しかし、なぜ唐突にゴジラを登場させたのか理由がわかりません。
ただ、ゴジラは核実験によって誕生した怪獣なので、この頃にアメリカが核実験を繰り返していたことが背景にあるのかもしれません。
もしそうなら東京じゃなくてワシントンで暴れてくれと思いますが、山崎貴監督はこのあとの2023年に『ゴジラ-1.0』を発表しているので、単にゴジラが好きで登場させただけでしょうか?
万年筆のインチキ商売は『男はつらいよ』が元ネタ?
「鈴木オート」の六子ことロクは、集団就職で一緒に上京した武雄が露天で万年筆を売っているところに出くわします。
兄貴分の詐欺師(浅野和之)が、こりゃ一流品だと言って他の客たちに買わせるインチキ商売ですが、このシーンは『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』が元ネタじゃないかと思います。
そう思えば、冒頭で怪獣が暴れるシーンも『男はつらいよ 寅次郎真実一路』にあったのを思い出します。もしかして、山崎監督は寅さんファンでしょうか?
再会した則文の戦友・牛島は生きていたのか、それとも?
今作は鈴木家に預けられた美加、トモエの昔の恋人・山本、ロクと幼なじみの武雄など鈴木家の人間関係が広がっていますが、一番印象に残ったのは則文が戦友会で再会した牛島(福士誠治)でした。
その夜、則文は牛島を自宅につれて帰り上機嫌で旧交を温めます。しかし翌朝起きると、昨夜は誰も来ていないし、則文は一人でゴキゲンだったとトモエに言われます。
劇中では牛島がほんとうに鈴木家に来ていたのかはハッキリしません。しかし、牛島は則文にしか見えない幽霊だったと思える設定が3つあります。
- テーブルの上にコップが1つしかない
- トモエと牛島が一緒に映るカットがない
- 窓の外に珍しくホタルが飛んでいる
牛島と則文が一緒に飲んでいるなら、ビールのコップは2つあるはずです。でもテーブルの上にコップは1つしかありません。また、トモエと牛島が一緒に映るカットがありません。
ふつうなら、気の利くトモエが牛島に酒や料理をを勧めるシーンがありそうなものです。しかし、トモエはロクと二人で台所にいるだけです。
そして、トモエとロクが台所の窓からホタルを見つけ、「ここでもホタルが見られるんですね」とロクが言うと、「ここで見たのははじめてよ」とトモエが答えます。
ここではホタルが牛島の霊魂を表すメタファーになっているようです。
今作の時代設定は昭和34年ですから、終戦からまだ14年しか経っていません。街並みがドンドン新しくなっても、大切な家族を失ったり、戦争で人生を変えられてしまった人たちは数え切れないほどいたでしょう。
明日への希望に満ちた日々の裏側で、生き残った者だけが幸せになっていいのかと葛藤する則文の気持ちは、当時の人達の多くが抱えていたジレンマだったのかもしれません。
また、ゴジラが災害を表すメタファーだとすれば、何度も自然災害に見舞われてきたこの国の脆弱性が描かれているようにも思えます。