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映画『犬神家の一族』感想・あらすじ:なぜ佐兵衛はこんな遺言書を残した?

SF・ホラー

頭部をスッポリ覆うゴムマスク。湖水から突き出た死体の両足。1976年の映画『犬神家の一族』はインパクトのある映像が話題を呼んで大ヒットしました。

物語は一代で巨富を築いた犬神佐兵衛が残した遺言書によって、親族のあいだに次々と惨劇が起こります。それはまるで、佐兵衛がわざとそうなるように仕組んだように思える展開でした。佐兵衛はなぜ、そんな遺言書を残したのでしょうか?

ここでは映画だけでは理解しにくい犬神佐兵衛という人物像を、原作の小説から補足して解説します。もちろんネタバレしまくりです。

主なキャスト・スタッフなど

  • 金田一耕助:石坂浩二
  • 野々宮珠世:島田陽子
  • 犬神松子:高峰三枝子
  • 犬神梅子:草笛光子
  • 犬神竹子:三条美紀
  • 犬神小夜子:川口晶
  • 犬神スケキヨ/青沼静馬:あおい輝彦
  • 犬神スケタケ:地井武男
  • 犬神スケトモ:川口恒
  • 青沼菊乃:大関優子
  • 橘警察署長:加藤武
  • 古館恭三弁護士:小沢栄太郎
  • 犬神佐兵衛:三國連太郎
  • 監督:市川崑
  • 製作:角川春樹、市川喜一
  • 原作:横溝正史『犬神家の一族』(角川文庫版)
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感想:犬神佐兵衛という稀代の性格異常者が産んだ惨劇

親の遺産を巡って生じる家族間の確執は、金額の大小に関わらず生じやすい問題です。現行の民法では故人との続柄に応じて遺産が分配される「法定相続分」がありますが、実際には少なからず揉め事の原因となることが珍しくありません。うちみたいに。

映画で佐兵衛が亡くなったのは昭和22年の2月。まだ家督制度が残っていた旧民法の時代ですが、法律の専門家によると、佐兵衛の遺言書に法的な効力があるかどうかは問題視されるところのようです。ま、そこはフィクションということでスルーします。

佐兵衛が残した遺言書の内容

この物語は遺言書に書かれた不公平きわまりない遺産の分配が事件の原因ですから、まずはその内容を簡単に確認しておきましょう。

  • 犬神家の全財産と事業は、次の条件の下に野々宮珠世へ譲る。
  • 珠世は配偶者を、佐兵衛の孫のスケキヨ・スケタケ・スケトモから選ぶこと。この3人から選ばなければ、珠世は相続権を失う。
  • スケキヨ・スケタケ・スケトモが珠世との結婚を望まないときは一切の相続権を失う。また、3人が死亡すれば珠世は誰と結婚してもいい。
  • 珠世が相続権を失うか死亡した場合、全財産は5等分され、5分の1ずつをスケキヨ・スケタケ・スケトモに与え、残り5分の2を青沼静馬に与える。
  • 珠世・スケキヨ・スケタケ・スケトモの4人が死亡した場合、全事業と全財産は静馬が相続する。
  • 静馬の消息がつかめず、あるいは静馬の死亡が確認され、他の相続者も死亡した場合は、全事業・全財産を犬神奉公会に全納する。

野々宮珠世は恩人の血筋ということで佐兵衛に引き取られて犬神家に同居しています。その珠世に条件つきとはいえ全財産を譲るというのですから、これで揉めるなと言うほうがムリな話です。

さらに佐兵衛は、珠世に3人の中から配偶者を選ぶ権利を与えました。まるで、かぐや姫状態ですね。そうなると、孫たちとその親たちが珠世と遺産を巡って互いに争うことを、佐兵衛はお見通しだったようです。

しかし、珠世は佐兵衛の恩人の血筋とは言え、なぜ彼はこうも彼女を溺愛したんでしょうか。

珠世は佐兵衛のはじめて愛した女性の孫だった

犬神佐兵衛は孤児として各地を放浪し、17歳のとき那須神社の神官だった野々宮大弐(だいに)に引き取られます。大弐は同性に対しては多少の機能を果たせたようですが、女性に対してはまったく不能でした。美少年だった若き日の佐兵衛は、大弐と同○愛の関係となります。

原作では佐兵衛と夫の関係に悩んだ晴世は実家に帰ってしまい、佐兵衛が野々宮家を出ることで晴世が戻ってきます。しかし佐兵衛と大弐の信頼関係は変わらず、その後も佐兵衛は野々宮家を訪れ、今度は晴世と関係をもちます。

佐兵衛にとっては初めての女性、不能者の夫を持つ晴世にとっても初めての男性ですから、若い2人が夢中で愛し合うのも当然です。そして大弐は神官という世間体もあって2人の関係を黙認します。

佐兵衛の深層心理には大弐に対して不義を働いたことに対する葛藤があり、そのストレスが金や女、名誉など、あらゆる欲望への原動力となったと金田一耕助は推測しました。

やがて佐兵衛と晴世のあいだに祝子(のりこ)が産まれると、大弐は実子として認知。成長した祝子と婿養子のあいだに産まれたのが珠世でした。戸籍上は他人でも、実際は血のつながった孫。佐兵衛にとって珠世が特別かわいいのはムリもありません。

と言っても、ふつうは娘である松子・竹子・梅子にも愛情を感じるのが当然です。しかし佐兵衛は野々宮夫妻への恩義と愛情が異常に強すぎ、妾とその娘たちには愛情をかけません。

佐兵衛にとって心から愛した女性は晴世だけでしたが、あらゆる欲望が強かった佐兵衛には男性としてのはけ口が必要でした。それが松子・竹子・梅子らの母親たちです。佐兵衛が3人もの妾を用意したのも晴世への愛情からでした。

1人だけだと愛してしまうかもしれない。それは晴世への裏切りになる。だから3人の妾を用意して、彼女たちを単なるはけ口として扱い、産まれた娘たちへの愛情も持とうとしませんでした。それが遺言書で娘たちが無視された理由です。

ここまで偏った愛情のかけかたも、狂気そのものですね。

青沼菊乃と佐兵衛の関係にも意外な事実が

佐兵衛が50を過ぎた頃に夢中になったのが、女工として働いていた当時まだ18、19歳の青沼菊乃でした。佐兵衛にとっては晴世の他にはじめて愛した女性となります。

これも映画では触れられていませんが、原作で菊乃は晴世の血縁となっています。佐兵衛が歳の離れた菊乃を寵愛したのは、菊乃に若い頃の晴世の面影があったのかもしれません。

その菊乃とのあいだに産まれた静馬こそ佐兵衛にとって唯一の息子ですから、ほんらいなら目の中に入れても痛くないほどかわいいはず。

が! 静馬は唯一の嫡男のわりには有利な立場にありません。

  • 珠世が相続権を失うか死亡した場合、全財産は5等分され、5分の1ずつをスケキヨ・スケタケ・スケトモに与え、残り5分の2を青沼静馬に与える。
  • 珠世・スケキヨ・スケタケ・スケトモの4人が死亡した場合は、全事業と全財産を静馬が相続する。

静馬が遺産を得るには、最低でも珠世が相続権を失うことが必要です。父親なら嫡男である静馬に有利な相続をさせたいと思うのがふつうでしょうが、静馬はなぜかダークホース的な位置づけにされています。

映画の中で金田一は、まるで死んだ佐兵衛が一連の事件を起こしているようだと言い、実行犯の松子も何かの力に動かされていたような気がすると告白します。となると、いったい佐兵衛は何がしたかったんでしょうか?

犬神佐兵衛という人は、最後まで野々宮夫妻に対する恩義と愛情を忘れなかった一方で、妾とその娘たちには一片の愛情も与えなかった冷酷な一面がありました。

今の時代なら何かの病名がつきそうな異常性格者ですが、スピンオフとして佐兵衛の生い立ちから野々宮夫妻とタダレた関係を結ぶまでの物語を見てみたくなります。

この物語は、どんなふうに考えても筋の通った理由が思いつきません。むしろ、佐兵衛という強欲な男の考えることには、最初から筋道などなかったのかもしれません。それがまた妙にリアリティーを生んでいるとも言えます。

印象に残った犬神家の面々

佐兵衛をはじめ個性的な犬神家の人たちですが、その中でも個人的に印象が強いキャラクターを取り上げてみたいと思います。

今だ現役で活躍中の草笛光子さん

佐兵衛の三女・梅子を演じた草笛光子さん『犬神一族の一族』の他に、『悪魔の手毬唄』『獄門島』など石坂浩二と市川崑監督による一連の「金田一耕助シリーズ」にも出演。

長女の松子を演じた高峰三枝子さんが亡くなったときは、化粧道具を持って駆けつけ死化粧を施してあげたそうです。

また2024年には作家の佐藤愛子さんをモデルにした映画『九十歳。何がめでたい』で主演されています。90にしてお肌ツヤツヤ、衰えのない美貌は、せっせとアンチエイジングに励む世のご婦人方が羨むほどでしょう。

島田陽子が重すぎて? 肩を脱臼した川口恒さん

本作のヒロイン珠世を演じた島田陽子さんは身長171cmと、当時の女性としてはかなり大柄で、体重も50数キロあったそうです。

スケトモが珠世を薬で眠らせ、犬神家の旧宅へ運ぶシーン。藪の中を女性をかかえながら歩くのはたいへんだろうと思いながら観ていました。案の定、スケトモ役の川口恒さんは島田さんを抱え続けて肩を脱臼してしまったとか。島田さんとしては、ちょっと恥ずかしいエピソードかもしれませんね。

恥ずかしいと言えば、スケトモが珠世のブラウスを引きちぎるシーン。勢い余って胸が見えてしまったため島田さんの事務所が抗議してNGに。すぐに撮りなおしたものの、本編ではNGにしたはずのシーンが使われています。

川口兄妹が恋人同士で共演

その川口恒さんと、スケタケの妹・小夜子を演じた川口晶さんとは実の兄妹。晶さんは石立鉄男さん主演のホームドラマ『水もれ甲介』や『雑居時代』などに出演し、お茶の間でもおなじみの女優さんでした。女優を引退してからは、陶芸家として活動されていたようです。

圧巻の演技力で魅了した高峰三枝子

長女の松子を演じた昭和の大女優・高峰三枝子さんは、気丈で貫禄のある表情と終盤に見せた呆けた表情など、細かい演技で豊かな表情を演じ分けています。こうして昔の映画を観ると、どうして往年の俳優たちの演技は迫力があるのだろうか、と思います。

劇中で「おや?」と思ったのが、松子が拝んでいる変な生き物の絵。これです↓

画像は1976年『犬神家の一族』からのキャプチャです。

『映画「犬神家の一族」の私的考察』
◎眷属霊について昔、コックリさんって流行りましたよね?(^_^)私が小学校の時に従兄弟の通う学校でコックリさんをやって発狂した数名が救急車で運ばれる「コックリ…

こちらの説明によると「幕末の国学者の岡 熊臣(おか くまおみ)が書いた『塵埃』の中の怪異物真図」で、「犬神」の説明書きのようです。さらにこのページでは、説明書きを祀っているのはおかしいだろとも突っ込まれています。

ま、この絵がどんなものだろうが、絵的におもしろければよかったんでしょうね。

『犬神家の一族』をより詳しく知りたければ、ぜひ原作の一読を!

映画『犬神家の一族』は静馬の白いゴムマスクや、湖からニョキっと突き出た足が有名すぎるほど絵的なインパクト重視の作品になっています。そのため映画では物語の裏にある設定がよくわからず、何度観ても???となるところが多々あります。

実はこのレビューを書く前に3回続けて観たんですけど、それでもサッパリわからないところが多々ありました。原作を読んで、ようやく「そういうことか」とわかりました。

もし同じように、何度観てもよ〜わからんと思う方は、 原作を読んでみてください。それから見直してみると、謎だったところが理解できます。

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