2006年に公開された映画『犬神家の一族』は、角川映画30周年を記念した同名映画のリメイク版。基本的に前作と同じ脚本・演出が踏襲されているのが本作の特徴。また主演の石坂浩二ら数名の他は俳優陣が一新されているので、新旧を観比べる楽しみがあります。
【主なキャスト・作品データ】
- 金田一耕助:石坂浩二
- 野々宮珠世:松嶋菜々子
- 犬神松子:富司純子
- 犬神竹子:松坂慶子
- 犬神梅子:萬田久子
- 犬神スケキヨ / 青沼静馬:尾上菊之助
- 犬神スケタケ:葛山信吾
- 犬神スケトモ:池内万作
- 犬神小夜子:奥菜恵
- 犬神佐兵衛:仲代達矢
- 原作:横溝正史「犬神家の一族」
- 監督:市川崑
- 脚本:市川崑、日高真也、長田紀生
- 製作委員会:角川ヘラルド映画、他
- 配給:東宝
- 公開:2006年12月16日
- 上映時間:134分
感想:旧作と比較して自由に突っ込んでみる楽しみ方もあり!
1976年から始まった角川映画にとっての第1作目が『犬神家の一族』でした。それを30年経ってリメイクするだけなら珍しい話じゃありません。今作のおもしろいところは、前作の脚本をほぼそのまま使ってリメイクしたところです。
ふつうはリメイク作品と言っても、出演者はもちろん脚本や演出も新しくするでしょう。しかし前作の脚本を再利用したことで、新旧の作品を観比べるという楽しみ方があります。実際に見比べてみると出演者の立ち位置や角度など、かなり前作を意識して撮られています。
さらに、石坂浩二、大滝秀治(大山神官)、加藤武(警察署長)は前作と同じ役どころで出演。また前作で犬神梅子を演じた草笛光子は琴の師匠、犬神竹子を演じた三條美紀は松子の母親として出演しています。
もちろん、30年前の脚本を使うことでむずかしくなったこともあります。ロケ地を含めて30年前と同じ環境を用意するのは不可能ですから、金田一が歩いてくる冒頭シーンなどは、コンピュータグラフィックスや合成技術が使われているそうです。それでも、2006年時点で違和感のない映像処理ができていることに感心しました。
前作と同じカット割りやセリフが多用されているので、出演者の演技を比べられるのもおもしろいところです。となると、前作に比べて誰の演技がいいとか悪いとかの比較論になりがち。しかし、オリジナルに分があるのは当然で、リメイク作品はどうしても辛口の評価になりやすい宿命を持っています。
今作も前作と比べられて辛口評価が多い作品ですが、なぜ前作のほうが人気なのか、なぜ今作の評価が厳しいのか、それを自分の目で確かめてみるという楽しみがあります。
今は手軽な価格で新旧のディスクが手に入るし、配信サービスで観比べることもできます。「金田一耕助シリーズ」が好きな人は、ぜひ前作と今作を続けて観比べてください。