映画『夜叉』:男が妻に異性を感じなくなるのは何故だろうか?

東宝

「どうして結婚すると嫁さんとはXXXしなくなるんだろうか?」と訊く友達に、ボクはこう答えました。

「つきあっている頃は彼女、結婚しても妻だけど、子どもができたら母。母になった妻は異性として見られなくなるんじゃないの?」

この仮説の証明にはなりませんが、こんな興味深いレポートがあります。

2018年、コン○ームメーカーの「相模ゴム工業株式会社」が、配偶者や交際相手がいる男女14,100名を対象に行った「ニッポンのセッ○ス2018年版」というレポートをまとめています。

同レポートによると男性の26.4%、つまり、4人に1人は浮気をしているという結果になりました。同じ相手ばかりじゃ満足できない。男とは、そういう生き物のようです。

セッ○スが種族を残す本能的な行為なら、種はたくさん蒔くほうが理にかなっています。タンポポなんて、まさにそうですね。だから男はみんな、タンポポ野郎です。

今作の主人公・修治は一見すると一本気な堅物に見えますが、眼の前にイイ女があらわれると古女房そっちのけで浮気に走ってしまいます。こんな女なら誰だって浮気しちゃうだろ! と思うくらい、田中裕子の魔性っぷりがたまりません。彼女の細やかで色っぽい表情を見ているだけでも至福のひとときが過ごせる作品です。

【主なキャストと作品概要】

  • 修治:高倉健
  • 螢子:田中裕子
  • 冬子:いしだあゆみ
  • 矢島:ビートたけし
  • 監督:降旗康男
  • 配給:東宝
  • 公開:1985年8月31日
  • 上映時間:128分

映画『夜叉』のあらすじ

かつて大阪のミナミで「人斬り夜叉」と呼ばれた修治は、妹の命を奪った覚○剤によるシノギを嫌って足を洗い、妻の故郷で漁師として過ごしてきた。穏やかな15年の歳月が過ぎたころ、浜の田舎町にミナミから蛍子と情夫の矢島が流れてくる。

矢島が漁師たちに覚○剤を売っていることに気づいた修治は、蛍子にブツを捨てさせる。代金を払えなくなった矢島は組に拉致されてしまい、修治は蛍子のためにミナミへ戻る。

映画『夜叉』の感想:蛍子と冬子、二人の女の静かな闘いが見どころ

冬子は妻として母としては申し分ありません。しかし修治は冬子を、もう異性としては見ていないようです。そんなときにあらわれたのが、不思議と男を引き寄せる魅力をもった蛍子でした。

「蛍」という居酒屋を開き、夜ごと男たちを集める蛍子。浜の女房たちにとって、蛍子は外敵そのもの。それまで小さな魚たちがのんびり回遊していた水域に、突然あらわれては食い散らかす大型魚のような存在です。

そんな蛍子に修治も引き寄せられ、彼女のために再びミナミへ戻ろうとします。妻の冬子にとっては、15年の平穏な暮らしが壊される危機ですが、蛍子の前ではけっして取り乱すことなく、あくまでも静かに女同士の戦いを挑みます。

今作の見せ所は修治と蛍子、冬子の三人が揃う居酒屋の場面。

修治が冬子に酒を注いでやると、蛍子が「私も」と盃を差し出します。すかさず修治の手から銚子を取って「はい!」と蛍子に酌をする冬子と、しぶしぶ受ける蛍子。このあと二人のあいだに流れる「間」が、女同士の冷戦開幕を告げています。

このシーンは、蛍子と冬子の互いに引かないせめぎあい。表面的には穏やかさを保ったまま、冷え冷えとした緊迫感が描かれています。そのあいだ、修治は横を向いたまま。そりゃ、浮気相手と嫁が同じ場所にいれば針のむしろでしょうね。

店を出るときも、愛想よくあいさつを交わす冬子と蛍子。冬子は見せつけるように、修治の腕を引きながら去っていきます。ドナドナされる修治は、家に帰ってから叱られることを覚悟していたかも知れません。

修治がいた席に座り、彼が使った割り箸をそっと口に含むシーンは、蛍子の孤独と欲望が一瞬にして表現され、視覚的にも象徴的な美しさが際立ちます。

今作は田中裕子の官能的な名演技が見どころ。何度見返してもこの魅力は色あせません。美人と言うより少年っぽい顔立ちなのに、とびきり艶やかに見えるのが不思議です。

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