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『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』レビュー:もう一度、専業主婦が家庭を守れる世の中に

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家族はつらいよ
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作品概要とあらすじ

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』は、家庭内騒動や社会問題をテーマにした喜劇映画シリーズの3作め。今回のテーマは「専業主婦」です。

毎日、家族のために働き続ける専業主婦。その仕事の価値が家族から正当に評価されない。そんな悩みを抱える平田家の主婦・史枝は、泥棒にへそくりを盗られたことを夫になじられ家を飛び出してしまいます。

とたんに家事の一切を史枝に頼りきりだった平田家はてんやわんやの大騒ぎ! ボヤ騒ぎまで巻き起こす一大騒動になってしまいました。

主なキャスト

  • 周造:橋爪功
  • 富子:吉行和子
  • 幸之助:西村雅彦
  • 史枝:夏川結衣
  • 成子(しげこ):中嶋朋子
  • 泰蔵:林家正蔵
  • 庄太:妻夫木聡
  • 憲子:蒼井優
  • 角田:小林稔侍
  • 加代:風吹ジュン

その他の概要

  • 監督:山田洋次
  • 脚本:山田洋次、平松恵美子
  • 制作・配給:松竹
  • 公開:2018年5月25日
  • 上映時間:123分

感想・レビュー

「専業主婦」。今では、この言葉に憧れを抱く女性は少なくないでしょう。男女平等と言われても、実社会は未だに男性中心。女性がビジネスパーソンとしてキャリアを積むには、まだまだ障壁が多い世の中です。

それならいっそ専業主婦となって一家を取り仕切ってみたい。そんな願望を女性が抱くのもムリありません。じつは男だって「主夫」になりたいと思う人は少なくないんですから。

とは言え、専業主婦になれる女性は今や少数派。

2020年のデータでは、妻が専業主婦でいられる家庭は571万世帯、対して共稼ぎ世帯はダブルスコアの1240万世帯となっています。

この数字はシングルファザーやシンブルマザー世帯は対象外ですから、総世帯数における専業主婦の割合はもっと少なく、全体の1/3くらいとなります。こうなると今や専業主婦になれるのは、女性にとって夢と言っても過言ではないのかもしれません。

そんな時代に専業主婦の苦労にスポットをあてる山田洋次監督の時代認識には苦笑を禁じえませんが、ここではむしろ、もう一度この国に専業主婦が増えてほしいという願いを込めたレビューをしたいと思います。

専業主婦の減少も少子化も貧困化も、30年間放置し続けた政治の成れの果て

あたりまえですが、妻が専業主婦でいられるには、夫にそれだけの収入や資産があればこそ。ところが今は、夫婦共働きでも暮らしに余裕がないことが珍しくありません。

「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る」は、明治の詩人・石川啄木の代表作ですが、令和の時代になってもそんな状況はあまり変わっていません。

でも高度経済成長期のあとは「一億総中流社会」と言われたように、戦後の日本経済はおおむね順調に成長し、日本人の暮らしも豊かになっていきました。生まれたときから不況続きの平成世代にとっては、信じられないような豊かさのある時代でした。

そのころの日本社会は、妻が専業主婦でいる家庭が珍しくありませんでした。還暦が近いぼくが子どもの頃も、友達の家にその子のお母さんがいるのは当然で、ぼくたちは友達のお母さんを知っていたし、お母さんたちも我が子の友達のことはだいたい把握していました。

その頃の日本にはまだ、男性は外で働いて家族を養い、女性は家を守るという風潮がありました。1985(S60)年に「男女雇用機会均等法」が制定されるまで、会社での女性の仕事は事務やお茶くみなど男性の補助的な仕事に限定され、給料も男性より低かったのが常識でした。

そんな時代を知らない世代にとっては、女性に対して差別的な待遇と感じるかもしれません。しかし見方を変えれば、男性社員には一家を養えるだけの給料が支払われ、職場は男女の出会いの場という意味もありました。

年功序列という日本型経営も今は否定されがちですが、多少の不公平はあっても、勤続年数が増えるにつれて男性は昇進・昇給でき、それにあわせて人生設計が立てられるメリットがありました。言い換えると、夫婦が安心して子どもを2人3人と産み育てることができたわけです。

そう考えると、少子化問題は経済問題ということ。経済問題の責任がどこにあるかと言えば、言うまでもなく政治にあります。

この30年のあいだ、先進国の中で日本だけが経済成長をしていません。その間ずっと日本国民は貧しさに耐えさせられながら、共稼ぎでも暮らしに余裕が持てない国になってしまいました。さらに最近では、共稼ぎでも子どもをもつことが恵まれていると思われるようになってしまいました。

現代の専業主婦は特権階級、子どもを持つと「子持ち様」?

若い世代には信じられないでしょうが、昔は「結婚適齢期」と言われるお歳ごろがありました。

だいたい女性は25歳までに結婚して、1〜2年後には一人目を生み、30歳までに二人目を産む。そんなパターンが「一般的」と思われていたのが昭和の時代です。25歳を過ぎても独身でいる女性は「売れ残ったクリスマスケーキ」と揶揄されることさえありました。

ところが今や30だろうと40だろうと、結婚できる男女は勝ち組! ましてや妻が専業主婦になり、子どもを持てる夫婦は「特権階級」と思われるようになっています。さらに昨今では共稼ぎ女性でも、子育て中の女性は「子持ち様」と言われて職場で妬みの対象にされることも。

ある世論調査では、子どもを持てない理由として最も多かったのが「経済的な理由」でした。子どもが欲しくても、夫の収入だけでは暮らせないというのが最多の理由。それだけに共稼ぎ夫婦で育児をしても、職場では厳しい状況に置かれることもあります。

子どもは急に熱を出すなど、いつ体調を崩すかわかりません。そのときに女性が仕事を休むことになれば、その分のシワ寄せは他の誰かにかかります。

そんなことが度々あれば子育て中の女性に対する不満や妬みが生まれ、いつしか子どもを理由に仕事を休みがちな女性を「子持ち様」と呼んで揶揄する風潮が生まれてしまいました。

昔なら子どもが病気になるのは当たり前で、「お互い様」と言ってカバーし合うのが日本の女性社会でした。

しかし「貧すれば鈍する」と言うように、必死に働いても報われない世の中になると、他人の子どものために自分が犠牲にされることに不平不満を覚える人たちが増えるのもムリのないことです。

こんなことも元を質せば、政治の無為無策が原因

非正規労働者の割合は、この30年で労働人口の40%近くまで増えました。

さらに女性が夫の扶養の範囲内で働けば社会保険料の徴収が免除される「103万円の壁」や「130万円の壁」が撤廃されることになり、いずれは短時間パートでもすべての労働者に社会保険への加入を義務づける流れになっています。

また「子ども・子育て支援金制度」が実施されると、子どもを持てない、または子育てが終わった人からも子育て中の人への支援金が強制的に徴収されることになります。

こうなると、日本社会はかつてないほど国に搾取されるようになり、さらにそんな状況でも専業主婦でいられる女性には、そうできない女性たちから怨嗟の念が向けられることにもなりかねません。

自分よりも恵まれた人に対する怨嗟の感情を「ルサンチマン」と言いますが、誰だって自分が割りを喰っていると思えば、恵まれた人を妬ましく思うのは当然。「衣食住足りて礼節を知る」というように、自分もある程度は恵まれていないと他人の幸せを祝福することなどできません。

「一億総中流」と言われた昭和のころに、ある種のおおらかさがあったのも、国民の多くがそこそこ豊かさを感じられたからです。しかし今の日本は政治が国民を貧しくして、妬みによって分断させようとしているかのようです。

政治家や公務員、マスコミや大企業の従業員など一部の人達だけが裕福になり、その分をそれ以外の人達から搾取する。そんな今の日本が専業主婦を妬みの対象とし、日本国民に貧困を強制し、少子高齢化を進め、やがては日本という国が滅亡するように仕向けています。

「なに大袈裟なこと言ってるの?」と笑い飛ばせる人は「勝ち組」で、この国が抱えている問題にも関心がない人でしょう。しかし、この国が滅びゆくということは「子持ち様」の子どもたちも滅びゆく日本社会で生きていかなければならないということです。

女性がもう一度「専業主婦」でいられる世の中に

ちょっと話を広げすぎたので、レビューを映画の内容に戻します。

平田家の主婦・史枝さんは、長年かけて貯めた40数万円のへそくりを泥棒に盗られてしまい、それを夫の幸之助には給料からのピンハネとまで言われてしまいました。それは専業主婦の労働に価値はないと断定したに等しい言葉でした。

専業主婦の毎日に、仕事としての価値はないのでしょうか?

1年365日休まず働く専業主婦の仕事を給料に換算してみるとよくわかります。仮に専業主婦の時給を1,000円とすれば、1日8時間労働では日給8,000円、30日だと24万円、1年では288万円になります。

実際に専業主婦の労働時間はもっと長くなることも多いので、ここはザックリ年収300万円としましょう。その中から40万円のへそくりを貯めていても、夫の給料からピンハネしたと言うのは酷すぎるんじゃないでしょうか?

20年もかけての40万円です。1年あたり2万円、1ヶ月あたりなら、たった1,666円です。それくらいのへそくりを夫に責められる筋合いはないと史枝さんが思うのも当然です。これは夫の幸之助が全面的に悪いですね。

最終的に史枝さんは家族のもとに帰りますが、もし彼女に離婚しても不自由のない資産があればどうなったでしょうか? と言うと『家族はつらいよ』の1作めに戻ってしまいますね。

バリバリ働いてキャリアを形成したい女性はそうすればいいし、専業主婦として家族の暮らしを守りたい女性はそうすればいい。

そんな選択肢を選べる世の中になることが、女性にも男性にも幸せじゃないでしょうか?

そのためには、自分たちさえ儲ければいいという政治家や官僚、企業の経営者たちを許さない風潮にすることが必要かもしれません。そのために、ぼくたちはもう少し日本の政治についても関心を持つほうが良さそうです。

『家族はつらいよ』シリーズは今作で終わってしまいましたが、いつかまた続きを観てみたい作品でした。