世の中でもっともむずかしいのは、他者とわかりあうこと。むしろ、ほんとうにそんなことができるなら、世界じゅうの問題の9割は解決しているんじゃないでしょうか?
マルコムは小児精神科として市長から表彰されるほどのエリート医師。順調にキャリアを重ね、美しい妻と幸せな日々を過ごしています。しかし、マルコムが10年前に担当したヴィンセントが自宅に侵入し、マルコムを撃ったあと、自身も頭を撃ち抜いてしまいました。
【主なキャストと作品概要】
- マルコム(精神科医):ブルース・ウィリス
- コール:ハーレイ・ジョエル・オスメント
- 監督:M・ナイト・シャマラン
- 公開(日本):1999年10月30日
- 上映時間: 107分
感想:ネタバレあり
エリート医師として順風満帆な人生を送ってきたマルコムは、ほんとうに子どもたちの心を救ってこれたんでしょうか?
マルコムはヴィンセントのことを思い出せずにいたくらい、彼にとってはたくさんいた患者の一人に過ぎませんでした。今ふうに言えば、ヴィンセントは終了済みのタスクの一つ、でしかなかったわけです。
しかし、ヴィンセントにとって頼りはマルコムだけでしたが、彼はマルコムに見捨てられたまま、辛い10年を過ごしてきました。そして、マルコムはそのあいだ、エリート医師として絶対の自信を持ち続けてきました。
もしかすると、マルコムが気づいていないだけで、ヴィンセントのように救われなかった子どもたちは他にもたくさんいたんじゃないでしょうか。
マルコムがコールを受け持ったのも、彼がヴィンセントと同じタイプだったからで、コールを治すことがエリートとしてのプライドを取り戻すことになるという動機からです。そんな奴に、デリケートな子どもたちの心が理解できるなんて、とても思えません。

俺様のような者をエリートって言うのさ! クックックッ
それでも次第にコールを受け入れるようになったのは、マルコムも妻との関係に問題を抱えていたからに他なりません。
人は辛い目に遭わなければ、他人の辛さを理解できません。エリートとして生きてきたマルコムに子どもたちの心はわかるはずもなく、マルコムは医学的なテクニックで子どもたちと接してきただけでしょう。
しかし、自分の弱さを知ったマルコムは、はじめてコールとの距離を縮めます。そして、コールも幽霊たちの気持ちを知って、彼ら・彼女らが抱える辛さを理解します。
マルコムとコールに、とうとう別れの時が来ました。マルコムはコールのアドバイスで妻の気持ちを理解しますが、同時に自分自信のこともやっと理解します。
もしかしたら、コールはそうなることを知っていたのかも? しかし、それでもアドバイスしたのは、コールからマルコムへの友情だったのかもしれません。
本作は、ホラーというジャンルに入れるのがためらわれるほど、ハートウォーミングな良作でした。