映画『エクソシスト』は1973に公開されたアメリカのホラー映画。その後に続編を含めて、数々の類似作品を生むことになった記念すべき一作目です。
リンダ・ブレアは無邪気な少女と、悪魔に取り憑かれたあとの邪悪な姿を見事に演じ分ける好演。当時まだ14歳だったとは思えない迫力ある演技を見せ、ゴールデングローブ賞 助演女優賞を受賞しています。また、2023年には『エクソシスト 信じる者』に出演したことでも話題になりました。
【作品概要】
- リーガン・マクニール:リンダ・ブレア
- クリス・マクニール:エレン・バースティン
- デミアン・カラス神父:ジェイソン・ミラー
- メリン神父:マックス・フォン・シドー
- 監督:ウィリアム・フリードキン
- 脚本・原作・制作:ウィリアム・ピーター・ブラッディ
- 配給:ワーナー・ブラザース
- 公開:1974年7月13日(日本)
- 上映時間:122分(劇場公開版)
『エクソシスト』あらすじ
イラン北部で遺跡の発掘を行っていたメリン神父は、悪魔パズズの像を発見する。
そのころ、映画の撮影でジョージタウンに滞在している女優クリス・マクニールの一人娘リーガンの言動に異常が見られるようになった。その後、クリスの自宅を訪れた映画監督のバーク(ジャック・マッゴーラン)が、不自然な形で首を折って亡くなる事故が起きた。
リーガンの異常な言動やバークの不可解な死亡から、メリン神父とカラス神父は悪魔祓い(エクソシズム)の儀式を行うことになる。
感想:あのシーンはディレクターズカット版だけ?
今でも映画やドラマで人気の高いエクソシストものですが、それらすべての始まりが、1973年に公開された今作の『エクソシスト』でした。もう、ホラー映画の金字塔ですね。
初代『エクソシスト』は今まで何度かテレビで観たことはあったんですが、あらためて観ると、ストーリーは完全に記憶からデリートされていました。冒頭でメリン神父と悪魔パズズ像が対峙するシーンや、リーガンの首がグルッと後ろ向きになるところなど、いくつかの印象的なシーンだけが脳に記録されていたようです。
しかし、「あれ、あのシーンがない?」
そう、『エクソシスト』といえば、リーガンがブリッジ状態で階段を蜘蛛のように降りてくるシーンですよね。しかし、今回Amazon Prime Videoで観た今作に、そのシーンはありませんでした。
「え、なんでないの?」と思って調べてみると、あのシーンは2000年に公開されたディレクターズカット版で追加されたようです。日本では2001年12月28日の『金曜ロードショー』で放送されたので、どうやらそのときに観たあのシーンが印象に残っていたようです。
今作が作られた70年代前半は、まだコンピュータ・グラフィックスが普及していなかった時代なので、特殊効果もアナログで行われていた頃です。今ならCGでちょいちょいと作り出せるシーンも、スタッフが手作りで実装していったところに、古いホラー映画ならではの味があります。
ただし、今ならレイシズムで放送できないシーンも、古い映画にはあるあるです。
劇中、映画監督のバークが執事のカールに向かって執拗にナ○ス呼ばわりします。カールを演じたルドルフ・シュンドラーはドイツ人ですから、今なら一発アウトのヘイトスピーチです。いくら役の上と言っても、よくこんなセリフを受け入れましたね。
冒頭、映画の撮影シーンでバークは、クリスや他の出演者から、こんなシーンやセリフは不要じゃないかと詰め寄られますが、今ならこんなヘイトなシーンこそ不要ですね。
ちなみにルドルフ・シュンドラーは、今作の4年後に公開された『サスペリア』にも出演しています。

今作の見どころは、もちろん後半の悪魔祓いですが、それまでのストーリーが少々間延びしすぎ。もっとメリン神父とパズズに因縁を作っておくとか、どうしてリーガンがパズズに憑依されたのかもわかりやすく描いてほしかったところです。
メリン神父が発掘をしていたイランといえば、かつてはシュメール文明が興った土地。劇中にもシュメールの彫像が出てきます。ということは、悪魔パズズもシュメール文明の頃から存在していたんでしょうか? というところから膨らませば、もうちょっとストーリーに膨らみがあったかも。
カラス神父の個人的な葛藤に時間を使いすぎという印象も強くて、サブキャラにそこまで尺を使わなくていいし、いつの間にかメリン神父がやられていたとか、ストーリーが雑!
それでも、こうした脚本のテキトーさもまた、当時のアメリカン・ホラーならではでした。