作品概要
『家族はつらいよ2』は、山田洋次監督によるホームコメディー映画の2作め。今回は高齢者の運転と無縁社会という問題を喜劇仕立てで問題提起しています。
主なキャスト
- 周造:橋爪功
- 富子:吉行和子
- 幸之助:西村雅彦
- 史枝:夏川結衣
- 成子(しげこ):中嶋朋子
- 泰蔵:林家正蔵
- 庄太:妻夫木聡
- 憲子:蒼井優
- 丸田:小林稔侍
- 加代:風吹ジュン
その他の概要
- 監督:山田洋次
- 脚本:山田洋次、平松恵美子
- 制作・配給:松竹
- 公開:2017年5月27日
- 上映時間:113分
あらすじ
周造は妻の富子が旅行中なのを幸いに、行きつけの小料理屋の女将・加代を昼食に誘い出す。その途中、工事現場で交通誘導をしている高校時代の友人・丸田と偶然に再会。後日、周造は丸田と酒を飲み交わし旧交を温めるが、朝になると家に連れ帰った丸田は周造の隣りで息を引き取っていた。
感想:
年老いた親の運転問題、どうしますか?
高齢者によるアクセルとブレーキの踏み間違い事故が社会問題となっていますが、平田家も周造が車をぶつけるたびに、家族はいつ大きな事故を起こすかとやきもきします。
平田家に限らず、年老いた親の運転に頭を悩ませている家庭は多いと思います。かく言うぼくは、オヤジから強制的に車を取り上げるという強引な手段を行使しました。ちょうど自分のオンボロ車が車検だったので……。
しかしオヤジはその数年後に亡くなったので、あのとき強引に車を取り上げて良かったと思います。そうでなければ、重大な事故を引き起こしていたかもしれません。
今作では周造さんの運転問題はあやふやなまま終わりましたが、高齢者の運転はもう国を挙げて解決しなければならない問題になっているんじゃないでしょうか?
このブログを書き始めたとき、またもや高齢者のアクセルとブレーキの踏み間違いによる死亡事故が起きました。加害者となった70代の女性は、まさか自分が……という思いだったそうです。

最近では「人生100年時代」なんて長寿を賛美する風潮がありますけど、そもそも人間の体は100年ももつようにできていないと思います。50代にもなれば運動能力が衰えるのは当然で、とくに視力と反射神経の衰えは運転に大きな影響が出ます。
ぼく自身も50代の後半になると資料の衰えが顕著で、それが運転にも影響しているのは認めざるを得ません。それを自覚しているので、昔よりはスピード控えめで運転するようにしています。
ところが高齢者の多くは何十年も運転してきたベテランという自負が強く、周囲が心配するほど自分の運転が下手だとは思っていないようです。
周造さんは昼食に誘った小料理屋の女将・加代さんに「運転がお上手ね」とおだてられ、「キャリアが違いますからね、この頃の若者とは」と、のたまっています。
うちのオヤジも「運転が下手になったって自覚してる?」と母に訊かれても、絶対に認めようとしませんでした。だけど、ほんとうは自覚していたと思うんですよ。なにしろ駐車場にバックで入れることができなくなっていましたから。
そうすると当然ですが、出るときに苦労します。いつも母親が外から「オーライ、オーライ、ストップ!」とかやってました。それでもオヤジは絶対に下手を認めようとしませんでしたね。周造さんといい、うちのオヤジといい、どうも今どきの年寄りは自信過剰に過ぎるようです。
高齢者の運転をどうするかについては、もう家庭でどうにかできる範疇を超えていると思います。しかし公共の交通機関で間に合う人なんて、大都市に住むひと握りの人たちに過ぎません。
とくに路線バスがどんどん廃止されていく地方では、運転をしないと病院に通ったり買い物に行けなかったりと日常生活に支障が出てしまいます。かと言って、他人の命を危険に晒してもいい理由にはなりません。
2020年以降の新車には「自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)」の搭載が義務化されたので、余裕のある人は新車に乗り換えるのもいいでしょうが、金銭的な負担を考えると後付けのアクセル踏み間違い防止装置を装着する方法もあります。
後付けのアクセル踏み間違い防止装置は各自動車メーカーが提供している他に、オート○ックスなどの自動車部品販売店でも独自の商品を販売しています。
後付けでも数万円の出費になりますが、事故を起こしたときのリスクを考えると、車検などのタイミングで装着するのが良さそうです。
しかし問題なのは、運転する高齢者本人が必要としないこと。ディーラーの人がアクセル踏み間違い防止装置の装着を勧めても「そんなもんいらん!」とキレ気味に断られることが多いそうです。
こういう高齢ドライバー対策として効果的なのは、マニュアルシフトの車に乗せること。しかし今はマニュアル車が少ないので現実的な選択肢にはなりませんね。
でも、これ以上アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故を防ぐには、マニュアル車の復活も必要じゃないかと思います。若い世代でもマニュアルのほうがいいという人はけっこういますし。
また、一定の年齢に達すれば強制的に免許の更新を認めない方法もあります。自動車免許を取得できるのは18歳以降と制限しているなら、免許を失効させる年齢を設定するのも有りかと。
もちろん、そうすると日常生活に支障が生じる人も多いので、そこはタクシーの利用に補助金を出すとか何か考える必要も出てきますね。
問題なのは、誰もそれを本気で考えないこと。とくに自動車議連のセンセーたちは自分が運転しない人が多いのか、こうした問題に手をつける気はないようです。
死ぬまで働けと言う、この国の冷たさ
周造さんは小料理屋の女将・加代さんと昼食に出かけたとき、工事現場で赤い棒を振っているのが高校時代の友人・丸田さんであることに気づきます。
このときの丸田さんのバツの悪さ。できれば知り合いにこんな姿を見られたくなかったという気持ちだったでしょう。
もちろん、警備員の仕事が恥ずかしいわけじゃありません。それどころか厳しい労働条件なのに薄給ですから、人手不足になるのもムリありません。
以前、実際に警備員を体験した作家の本を読んだことがあります。炎天下で何時間も立ちっぱなしなのは当然。その状況で行き交う車を適切に誘導しなければなりませんが、これがなかなか難しい。体力と同時に神経まで酷使する仕事です。
加えて警備業界の離職率を上げているのが人間関係のようです。
やっぱり最後の手段として警備業界に流れ着いた人も多いので、奇人変人レベルの社会不適合者が幅を利かせている職場も多いようです。ふつうに仕事をするだけならまだしも、アホの相手までさせられるのでは離職者が多いのもムリありませんね。
それだけ厳しい労働環境でも、世間の警備員に対する眼差しは好意的とは言えません。むしろ底辺労働者という偏見のほうが強いでしょう。
映画の中でも周造さんが「いい歳して、あんな仕事して」と言い放っています。この時点では周造さんも、そうした世間並みの偏見を持っていたようです。

そんな周造さんの気持ちが変わったのは、丸田さんと酒を酌み交わし、自宅に泊めた丸田さんが自分の隣りで息を引き取ってからでした。
亡くなった丸田さんが住んでいたアパートは、古い木造の6畳一間ほどの部屋。周造さんの次男の庄太と奥さんの憲子は、大家の女性(広岡由里子)から丸田さんの生前の様子を聞かされます。
警備の仕事から帰った丸田さんは、古いアパートの狭い部屋でお酒を飲むことだけが楽しみでした。心臓に持病を抱えていることを知っていた大家さんは生活保護を勧めていましたが、丸田さんは「俺がダメなのは俺のせいだから、お国の世話になりたくない」と言っていたそうです。
古い世代ほど、生活保護を受給することに抵抗感が強いようです。自分は社会から施しを受けなければ生きることができない、という感覚なんでしょうか。
しかし、今では税金と社会保険料を併せて収入の半分を国に巻き上げられる時代です。江戸時代だったら一揆が起きているような状況です。日本人は取られることには鈍感なのに、受けることには抵抗を感じるのはどうしてでしょうか?
苦労つづきのあげく、身よりもなく旅立った丸田さんの死に周造さんは語ります。
いったい、あいつがどんな悪いことをしたっていうんだ。事業に失敗した、借金を背負い込んだ、騙されて連帯保証人になった。それが、それが、一人きりであの世に旅立たなければならないほどの罪なのか? 税金だって収めたし、事業で雇用を生み出したこともあるんだぞ。なんで、あいつが! 70を超えた老人がカンカン照りの中で汗をかきかき、赤い棒を振り回さなきゃならないんだ。死ぬまで働けと言うのか、この国は!!!
「一億総活躍社会」なんていう美辞麗句のもと、「死ぬまで働け政策」を推進中の日本政府。今の日本は、税金や社会保険料を合わせた国民負担率が5割に近くなっています。つまり必死に働いて得た収入の半分が国に巻き上げられている状況です。
日本は「恥の文化」と言われます。ことさら権利を主張するのは恥ずかしいことだと思われています。でも、そうした国民性を利用されて、ぼくたちはドンドン貧しくされているような気がします。
それもこれも、政治に無関心な国民性が招いた自業自得なのかもしれません。

