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男はつらいよ 翔んでる寅次郎(23作)10周年記念作品 1作目のパロディーが随所に

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男はつらいよ
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作品概要

「男はつらいよ 翔んでる寅次郎」は1979年8月4日公開のシリーズ23作目。

マドンナには『幸福の黄色いハンカチ』の桃井かおり、その相手には「積木の部屋」「シクラメンのかほり」などのヒット曲を持つ布施明を起用し、上流階級で育った不器用で世間知らずな男女が下町で愛を育む物語となっています。

評価:★★★☆☆

主なキャスト

  • 車寅次郎(主人公):渥美清
  • さくら(妹):倍賞千恵子
  • 竜造(叔父):下條正巳
  • つね(叔母):三崎千恵子
  • 博(さくらの夫):前田吟
  • タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
  • 旅館の若旦那:湯原昌幸
  • 邦男:布施明
  • ひとみ:桃井かおり

あらすじ

北海道で寅次郎は、男に乱暴されかけた女ひとみを助ける。彼女は上流家庭の娘で結婚を控えているが、どうしても嬉しい気持ちになれず一人旅に出たという。

結婚式の当日、ひとみはウエディングドレスのまま式場を逃げ出して「とらや」に来てしまう。驚く寅次郎たちだったが、理由も聞かずにひとみを預かることにした。

花嫁に逃げられた邦男は、父親に勘当されて安アパートで暮らし始める。インテリアデザイナーから自動車の修理工になって新しい暮らしを始めた邦男は寅次郎と親しくなり、ひとみへの想いを語る。

感想・考察

マドンナひとみを演じる桃井かおりは、山田洋次監督の『幸福の黄色いハンカチ』(’77年)にも出演した個性派女優。渥美清や倍賞千恵子とも同作で共演ずみなので、今作はかなり期待が高まる……はずなんですが、個人的には、あまり高い評価はしていません。

このころは寅次郎(渥美清)がすでに50歳を過ぎていたので、マドンナが若い女優だとロマンスが成立しないというジレンマがあったんですね。

そういう場合は寅次郎が若い男女のサポートにまわるというストーリー展開が常なんですが、それだと寅次郎がメインのストーリーにはなりません。だから、たいていおもしろい話にもなりません。きっと、山田洋次監督もどうしようかと悩んでいた時期だったんでしょうね。

10年目の記念作。1作目のパロディーネタが随所に

今作は『男はつらいよ』映画シリーズが始まって、ちょうど10年目となる節目の作品。そのため、1作目のパロディーとなるシーンやセリフがあちこちに散りばめられ、古くからの寅さんファンをクスっとさせる演出が施されています。

前半で博の後輩が結婚すると、寅次郎は「職工が結婚するとはねぇ」と鼻で笑っていますが、1作目でも博たちを職工、職工とバカにしていました。

ひとみと邦男が最初の結婚式を挙げたホテルは、さくらが金持ちの御曹司と見合いをしたホテル ニューオータニ。当時はこのホテルが上流階級の象徴的な存在だったんでしょうね。

後半でひとみが「寅さん、わたし、やっぱり(邦男さんと)結婚する。いいでしょ?」と言うセリフも「お兄ちゃん、わたし、博さんと結婚する。いいでしょ?」と、さくらが言ったセリフと同じ。また、ひとみと邦男の二度目の結婚式も、さくらと博のときと同じような雰囲気の会場です。

こうして振り返ってみると、マドンナ役に若い桃井かおりを起用したのは1作目のパロディーを作りたかったからだとわかりますが、それでもなお不満が残ります。

ひとみと邦男の婚約中の関係が曖昧

今作はひとみと邦男がストーリーの中心ですが、その割には二人の背景が描かれていません。どうしてひとみは式場から逃げ出すほど邦男との結婚を嫌がったのか?

「これでお終いって感じなのよ。これから素晴らしい人生が広がってくなんて幸せな気分になれないのよ。そんなこと思ったら急に目の前が暗くなってきちゃって」

「とらや」でひとみは、こう語りました。しかし、具体的な理由は何ひとつありません。これほど周囲に迷惑をかけてまで自分の気持ちに正直なんですから、そもそも気乗りしない結婚に承諾したのも不自然な話です。

ひとみの性格なら、親に結婚しろと言われても「いやよ、わたし結婚なんてしないわよ!」と突っぱねるはずです。

邦男とのあいだに何かあったとか、1つでも具体的なエピソードがあると観ているほうも納得できるんですが、「なんとなくイヤでした」じゃスッキリしません。

それなのに、邦男が安アパートで「一度も言ったことなかったろ? きみのことが好きだって」と今さら告白した途端に「ねえキスして」じゃねえだろ! と突っ込みたくなります。

このシーンが感動する、とレビューする人もいるんですが、そう思えないのはボクの性根が曲がっているせいでしょうか?

コメディーなんだから、そこまでこだわらなくても……と言われそうですが、ちゃんと登場人物の心の機微を描いた作品も多いので、そこがなおざりにされたのが気になってしまいます。

ボクはこの作品を定額制の配信サービスで観ているから「つまらん」で済みますが、もし休日に映画館まで足を運んで1800円くらい払って、それでこの程度の作品だったら時間とカネをムダにしたという気持ちでガッカリしたと思います。

出演者について

この頃の桃井かおりといえばアンニュイ(気だるい)なイメージで、萩原健一主演のドラマ『前略おふくろ様』でも舌ったらずなしゃべり方が印象的でした。このドラマはボクのお気に入りで、桃井かおりの代表作の一つと思っています。

また1982年の映画『疑惑』では夫殺しの疑いをかけられた悪女を演じ、岩下志麻が演じる彼女の弁護士との心理戦を見事に好演。ラストシーンでは岩下志麻の白いスーツに赤ワインをドボドボッとかけるシーンが強烈でした。

邦男役の布施明は「シクラメンのかほり」など数々のヒット曲をもつ実力派のシンガー。劇中でも2度目の結婚式で「止まり木」という曲を歌っていますね。1974年にヒットした「積木の部屋」は若い男女が安アパートで暮らしていたころを歌った曲で、今作で邦男が住んだアパートがまさにそんなイメージです。

「翔んでる」のは寅次郎じゃなく、ひとみ

今作のサブタイトルは「翔んでる寅次郎」ですが、「翔んでる」というニュアンスがわかる人は、ボクと同じくこの当時に青春を過ごしたオジサン・オバサンですね。

「翔んでる」とは、空気を読まず自由奔放に振る舞う様子の意味です。たぶん、この言葉が流行ったのは柳沢きみおのマンガ『翔んだカップル』のヒットでしょう。薬師丸ひろ子の主演で映画化された他に、桂木文が主演のテレビドラマも人気でした。

今作の寅次郎は「翔んでる」どころか、いつもより自分を抑えて若い二人のために頑張っています。むしろ翔んでるのはひとみのほうで、周囲の迷惑もおかまいなしで自由奔放に「翔んでる」役どころは桃井かおりにピッタリな気がします(いい意味で)。

今作はひとみと邦男の薄い人物描写が気に入らないんですが、それでも若いころの桃井かおりが観られるだけでボクとしてはギリギリ及第点です。