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男はつらいよ 寅次郎紙風船(28作)またもや切ないすれ違い

男はつらいよ
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作品概要

「男はつらいよ 寅次郎紙風船」は1981年12月29日公開のシリーズ28作目。

寅次郎になついて一緒に旅をする家出娘を岸本加世子、テキヤ仲間に託された未亡人を音無美紀子が演じ、娘盛りと女盛り、二人のマドンナが対照的に描かれています。

評価:★★★★☆

主なキャスト

  • 車寅次郎(主人公):渥美清
  • さくら(妹):倍賞千恵子
  • 竜造(叔父):下條正巳
  • つね(叔母):三崎千恵子
  • 博(さくらの夫):前田吟
  • 満男:吉岡秀隆
  • タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
  • 源ちゃん(寺男・寅の舎弟):佐藤蛾次郎
  • 安夫:東八郎
  • 愛子の兄:地井武男
  • 常三郎:小沢昭一
  • 愛子:岸本加世子
  • 光枝:音無美紀子

あらすじ

寅次郎は大分の旅館で愛子という家出娘との相部屋を頼まれ、なついてしまった愛子をつれて数日のあいだ一緒に旅をした。

久留米水天宮の縁日で声をかけてきたタコ焼き屋の光枝は、兄弟分の常三郎の女房だった。福岡で病に臥せっている常三郎を見舞った寅次郎は、自分が死んだら女房をもらってくれと頼まれる。

感想・考察

今作は岸本加世子と音無美紀子によるダブルマドンナと言われる作品。

岸本加世子が演じる家出娘の愛子は天真爛漫というか天衣無縫というか、「キャハハハ」と笑うはじけた女の子。親と折り合いが悪く腹違いの兄がいるという愛子に、寅次郎はもう一人の妹ができたような親近感を覚えます。

音無美紀子が演じる光枝も幼いころに親を亡くして苦労を重ねた大人の女として描かれ、寅次郎を真ん中において二人のキャラクターが対照的に描き分けられています。

寅さんと健康保険

「とらや」の茶の間で常三郎が亡くなったと聞いた博とさくらの、こんな会話があります。

博:「兄さんの同業だとすると大変だな。健康保険だって払ってないだろうし」
さくら:「病院の支払いもね」

ちょうど今作を見返していたときネットに山田洋次監督のインタビューがあり、このシーンについてのエピソードを語っていました。

この映画が封切られると、厚生省(当時)の課長さんが手紙をくれてね。「さくらさんの家を付帯住所にすれば寅さんも健康保険に加入できます。どうか寅さんを健康保険に入れてあげてください」って(笑)。

「男はつらいよ」の地方ロケで抱き続けた疑問
――シリーズの後半からは、過疎化が進む地方の現実が映し出されます。伊豆諸島の式根島(36作『男はつらいよ 柴又より愛を込めて』1985年公開)や北海道の知床(38作『男はつらいよ 知床慕情』1987年公開)、宮…

昭和の時代には、人情味とユーモアのある公務員もいたんですね。

寅次郎は自営業者なので、売上から旅費などの経費を引いた所得によって国民健康保険料が決まります。万年金欠な寅次郎の売上は大した金額じゃないでしょうから、ほとんど経費と相殺されて微々たる保険料で済むんじゃないでしょうか。

問題は、寅次郎が帳面をつけたり確定申告ができるかですね。

兄弟分が亡くなったことで、さすがに我が身の行く末を考えた寅次郎。「もしオレが病気になったら、結局はみんなに迷惑かけることになっちゃうもんな」と、ようやく家族への迷惑に思い至ります。

そんな寅次郎に「いくらでも面倒みてあげるよ」と優しい言葉をかけてくれるおばちゃん。

ところが、光枝の泣き声は笛の音に聞こえるけれど、おばちゃんが泣くと夜泣きそばのチャルメラだなんて言うもんだから、おばちゃん怒って泣いてしまいます。

そこに愛子があらわれ、寅次郎は泣いているおばちゃんを「うるせえ!」と一喝。

たったいま自分の面倒をみてくれると言った人をバカにしたり怒鳴りつけたりと、相変わらずひどい寅次郎ですが、このシーンが個人的に一番おもしろいところです。

それにしても、おばちゃん可哀そうですね。

80年代は個人商店が消えていった時代

もうひとつ自分なりの見どころは、前半にあるクリーニング屋を営む安夫との会話。

小学校の同窓会に出た寅次郎ですが、傍若無人な態度のため誰にも相手にされなかったようです。それでも悪酔いした寅次郎を送ってくれた安夫に「おまえの店が潰れても世間は痛くも痒くもない」と言い放ちます。

最初は我慢していた安夫でしたが、とうとう堪忍袋の緒がブチ切れました。

「俺の店は間口二間のケチな店だよ。チェーン店が出るたびに売り上げが落ちて、なんべんも店を畳もうと思ったよ。でもな、そのたびに女房や娘が、頑張ろう、この店をなんとか守っていこうって言ってくれてな、歯をくいしばって今日までやってきたんだよ!」

80年代はまだ「大店法」という法律があったので大規模なショッピングセンターは出店できませんでしたが、中規模のスーパーや各種のチェーン店が続々と各地に進出し、地元の商店を圧迫し始めたころでした。

今作が公開された81年には、うちの近くにも「北海道ニチイ」の店舗が開店し、近隣の個人商店は少しずつ姿を消していきました。

一か所で買い物が済むスーパーやショッピングセンターは便利ですが、その反面、個人が小商いを営んで生きていく術を奪ってしまいました。

あのころ各地に出店していたスーパーやチェーン店が今では相次いで閉店し、そこで働いていた人たちは一斉に失業したり、地域に買い物難民が生まれています。

便利さは、それを利用できるうちは良くても、無くなってしまったり自分がそこまで行けなくなると、不便極まりないことになってしまいます。寅さんシリーズを見返していると、そうした時代の移り変わりにあらためて思い至ります。

今回もすれ違いの両想いに終わったおとなの恋

「自分が死んだら女房をもらってくれ」と常三郎から頼まれた寅次郎に、光枝は「約束したの? 本気で」と訊きます。

光枝も寅次郎が好きで、寅次郎さえハッキリ言ってくれれば亡夫の言うとおりにするつもりだったのが表情からわかります。でも、そういうときに限って尻込みするのが寅次郎。

「最期までバカだったね、あの男」と言う光枝に、「まったく、バカだよなぁ……」と言う寅次郎の言葉は自分に対するものだったのでしょう。

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