作品概要
「男はつらいよ 柴又慕情」は1972年8月5日公開のシリーズ9作目。マドンナの吉永小百合が、父と恋人のあいだで悩む女性を演じています。
正直言って作品としては凡庸な出来栄えとしか思えませんが、のちの13作目「男はつらいよ 寅次郎 恋やつれ」の前編として観れば、まあまあかな? という感じです。
評価:★★☆☆☆
主なキャスト
- 寅次郎:渥美清
- さくら(妹):倍賞千恵子
- 竜造(叔父):松村達雄
- つね(叔母):三崎千恵子
- 博(義弟):前田吟
- 修吉(歌子の父):宮口精二
- 歌子(マドンナ):吉永小百合
あらすじ
マイホームを持とうとする博とさくらを援助するために、竜造とつねは「とらや」の二階を下宿として貸し出そうとする。そこへ帰ってきた寅次郎は怒って出て行き不動産屋へ飛び込むが、案内されたのは「とらや」だった。
金沢を訪れた寅次郎は、東京から観光に来ている歌子と知り合う。東京へ戻った寅次郎は、「とらや」を訪ねてきた歌子に大喜び。みんなに歓待されて喜んで帰っていく歌子だったが、実は結婚のことで父親とうまくいっていないことに悩んでいた。
感想・考察
劇中に「ディスカバージャパン」という言葉が出てくるように、当時は国鉄(現在のJR)が国内旅行の需要を喚起していたころでした。女性ファッション誌が火付け役となった「アンノン族」と呼ばれる若い女性の旅行もブームだったようです。
今作の注目ポイントのひとつは、二代目となる竜造おいちゃんを松村達雄が演じていることです。前作公開のあとに急逝した森川信のあとを引き継ぐのはむずかしかったでしょうが、元々コミカルさが持ち味だけに、それほど違和感なく新おいちゃんを演じています。
また、歌子の父を演じる宮口精二と(今作には登場しませんが)博の父を演じる志村喬は、黒澤明監督の『七人の侍』で共演した間柄。これも山田洋次監督が意図的にキャスティングしたのでしょう。
今作は、寅次郎が恋をして、いつものように失恋して去っていく。ただ、それだけの話です。なんのヒネリもありません。今どきはアマチュア作家のほうが、もっとうまいストーリーを作るでしょう。
映画のレビューサイトでも、今作に対する評価はみごとに二分しています。好評価は吉永小百合、低評価はストーリーの凡庸さを理由としています。ボクも吉永小百合が映っているだけの駄作と思って観ていました。
ただし、今作は「歌子物語」の前編として観れば及第点を与えられます。父親の反対を振り切って嫁いだ歌子ですが、はたしてその後は……。今作は、ぜひ13作目の「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」とセットでご覧ください!

