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『メッセージ(Arrival)』未来がわかっても人は生きていけるか?

SF・ホラー

もし未来は確定済みで、それを知ってしまったら? それでも人は生きていけるだろうか?

言語学者のルイーズはエイリアンの文字を解読することで、未来を知ることができるようになります。それはやがて大きな不幸を待ち受けるものでしたが、彼女は今を大切に生きていこうと決意します。

この先、ものすご〜く不幸な人生が待っているとしても、あなたは力強く生きていけますか?

もし多感な歳ごろに老後までわかってしまったら、それどころか、その前に死んでしまうことがわかったら。自分ならきっと生きる希望を失っただろうと思います。

※この先の感想にはネタバレが含まれます。

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映画『メッセージ(Arrival)』あらすじ

ある日、世界各地の12箇所にUFOが出現した。言語学者のルイーズはアメリカ陸軍に要請され、エイリアンとの接触を試みる。

彼らからのメッセージが「武器を与える」とも読めることがわかると、中国をはじめ世界はUFOへの攻撃体制を取り始めた。

しかし、メッセージの本当の意味は?

感想:YOUは何しに地球へ?

異星人との接触をテーマにした映画と言えばジョディー・フォスターの『コンタクト』が知られていますが、今作の『メッセージ(Arrival)』はそれと比べるとストーリーにアラが目立ちます。

そもそもエイリアンが地球に来た目的がハッキリしません。

終盤でルイーズが彼らからのメッセージは「ギフトを贈る」だと解読したものの、それが人類を一致団結させるために、わざと12ヶ所に分かれて登場したんだよ〜ん! というなら、やり方が回りくどい。一歩間違えれば逆効果です。

そもそも、なぜエイリアンがそんなおせっかいをしに来るのかも不明です。今作はテッド・チャンの『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』という小説が原作のようですが、原作でもエイリアンがなぜ地球に来たのか、なぜ去っていったのかは不明だそうです。

もしかしたらエイリアンが来たのは、ただのサイトシーイング(観光)だったのかもしれません。要するに、原作からして中途半端なストーリーだったということです。

しかもエイリアンやUFOもツッコミどころ多すぎ。

エイリアンはどう見ても昔の人達が想像したタコ型火星人にしか見えません。足が7本だからヘプタポッドと呼ぶそうですが、タコと言われるのがイヤで1本減らしたんでしょうか。

それから、UFOに乗り込むのにリフトを使うって……。

UFOなら光線を発射して、スーッと吸い上げてくれるんじゃないんかい! 進歩してるんだかどうなんだか、よくわからんエイリアンです。

もしも未来が確定しているとしたら?

ずっと先の未来までわかってしまったら。それは筋書きの決まった芝居を演じるようなもの。芝居なら幕が降りれば自分の人生に戻れますが、人生そのものが演目なら降りようがありません。

ルイーズはやがて生まれてくる娘のハンナが、幼くして病死してしまうことを承知で彼女を産みます。しかし、あとからそれを聞かされた夫のイアンはルイーズの選択を許せず、彼女の元を離れてしまいます。

イアンにしてみれば、ルイーズの選択に怒るのは当然です。むしろハンナを産んだのは、ルイーズのエゴと言えます。

ルイーズがどんな不幸も受け入れていこうと決意するのは勝手です。しかし、その選択が夫や娘にまで大きな不幸を与えるなら、彼女の選択ははた迷惑でしかありません。

今を大切に生きていこう! というメッセージはもっともらしく聞こえますが、人は常に先のわからない未来に怯えながら生きているもの。致死率100%の人生なのに、いつか必ず訪れるその日のことは考えたくないのが人間です。

それなのに、ずっと先の未来まで知ってしまったら?

それがウハウハな人生ならまだしも、何年後の何月何日にとんでもねー不幸な出来事が訪れるなんて知っていたら気が気じゃないのが当然です。

それだけで、この映画って厳しい評価しかできないんですよね。ぼくが男だからでしょうか、ルイーズの決断に共感することができません。

ルイーズは息を引き取ったハンナの亡骸に向かって「帰ってきて!」と叫びます(※DVDの日本語版)。じゃあ、やっぱり産んだことを後悔してるんじゃないの? と言いたくなります。その日が来ることは生まれる前から知っていたんだから、今さら「帰ってきて!」じゃねーだろと。

我が子に障害があると知っても、それでもその子を産みますか?

ちょっと脱線しますが、この映画を観て思い浮かんだのは「優生保護法」と「新型出生前検査」でした。

いきなり何? って思われたかも知れませんが、あながち無関係でもないので少々お付き合いください。

「優生保護法」とは戦後間もない1948年に、障害をもつ子どもを出産させないようにする目的で作られた法律です。この法律の対象者は本人の同意なしで強制的に不妊手術が行われ、あきらかに人権侵害がありました。

しかも1995年に「母体保護法」へ改正されるまで48年間も続いていた法律です。そして最高裁判所が国の責任を認める判決をだしたのは2023年とごく最近のことです。

特定の人たちを劣った人種として弾圧するのは、ドイツのナチス政権がユダヤ人に行ったことと同じことですよね。日本人とドイツ人って、そういうメンタルは共通しているのかもしれません。

ルイーズはハンナが幼くして病死してしまうことを承知で彼女を産みました。でも我が子が大きな不幸を抱えて生まれてくるとわかっていても、それでも産みたいと思う人はそう多くないのが実情のようです。

現在は胎児の障害の有無を診断する「新型出生前検査」が可能となっています。2013年に導入されてからの5年半に6万人超の妊婦が診断を受け、陽性が確定した890人のうち9割が中絶に踏み切っています。

【特集】陽性確定で9割が「中絶」…『新型出生前診断』重い決断伴う検査に…“無認可“での実施も横行 | 特集 | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ
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「障害も子どもの個性」と言われますが、それは産んでから障害がわかった場合に言うことで、多くの人たち(女性も男性も)の本音は、あらかじめ障害児だとわかっていれば不幸な未来は避けたいと思うのが自然な気持ちです。

誰だって、不幸な未来なんて知りたくないし見たくもない。自分がいつ、どこで、どんなふうに死ぬんだろう? と考えたことのない人はいないでしょう。

でも、そんなことはすぐに考えないようにして不幸な未来から目を背けます。そうじゃないと、とても世知辛いこの世の中を生きていくことなんてできません。

今を大切に生きる。どんな未来だって受け入れる!

ルイーズの決意は立派かもしれませんが、その影響が周囲にまで及ばないようにしてほしいと思ってしまうのは冷たい見方でしょうか?

哲学者のニーチェは、どんな人生だろうと何度でも繰り返す覚悟をもって生きろと言いましたが、そう言ったニーチェは発狂して死んでしまいました。

やっぱり、先がわかった人生を受け入れるなんてムリですよね?

今回は辛口のレビューとなりましたが、その一方では今作を激しく高評価している人たちも多くいるようです。

はたして映画『メッセージ(Arrival)』は駄作なのか、それとも名作なのか? それはぜひあなたの目で確かめてください。

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