作品概要
「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」は1974年8月3日に公開されたシリーズ13作目。
吉永小百合が2年ぶりにマドンナの歌子役で出演しています。ストーリーとしては第9作(1972年)の後編となっており、父と娘の不器用な愛情物語が完結します。
評価:★★★☆☆
主なキャスト
- 車寅次郎:渥美清
- さくら(妹):倍賞千恵子
- 竜造(叔父):松村達雄
- つね(叔母):三崎千恵子
- 博(義弟):前田吟
- タコ社長(隣の印刷会社の社長):太宰久雄
- 絹代:高田敏江
- 修吉(歌子の父):宮口精二
- 歌子(マドンナ):吉永小百合
あらすじ
島根県から帰ってきた寅次郎は、絹代という女と身を固めると言う。絹代には亭主がいたが3年前から行方不明。今は二人の子どもを抱えながら働いている。
さくらとタコ社長は絹代に会うため寅次郎と共に島根へ向かったが、一足早く絹代の亭主が帰って来ていた。
気を取り直して商売に励む寅次郎は、津和野の食堂で歌子と再会する。
歌子は夫が亡くなったあとも姑や義姉と一緒に暮らしているが、そこはけして居心地のいい場所ではない。父親の反対を振り切って結婚したため帰る場所のない歌子は「とらや」を訪ねる。
感想・考察
今作の前編となった第9作目「男はつらいよ 柴又慕情」は凡庸なストーリーで、ただ吉永小百合が映っているだけの駄作でした。
山田洋次監督は最初から9作目と今作を前後編として撮るつもりでいたのかは知りませんが、この2作を続けて観ることで「歌子物語」はまあまあ見ごたえある作品となっています。しかしそれは、配信サービスやDVDなどで9作目と今作を続けて観ることができる今だから言えること。
歌子が津和野のバス停で寅次郎に「いいわね。私もそんな旅がしたいな」というところは、第8作目「男はつらいよ 純情篇」で池内淳子の演じる貴子が「うらやましいわ。私もそんな旅がしてみたいな」と言ったセリフを踏襲しています。
貴子も歌子も、今いる場所から自由になりたいけれど身動きが取れない境遇にあります。しかし金策に困っている貴子とは違い、歌子は寅次郎や「とらや」の人たちに助けられながら、新しい人生をスタートすることができました。
こうした義理人情が『男はつらいよ』シリーズの魅力ですが、逆に言うと、義理人情がフィクション作品のテーマになってしまうのが「渡世のつれえところ」ですね。
ほんとうなら個人が困っているときこそ公が手助けしなければならないのですが、総理大臣が自ら「自助・共助・公助」の順だと言うこの国では人情も福祉もあてにできません。
だからこそ、寅次郎という社会のセーフティーネットから一番こぼれ落ちている男が誰よりも義理人情に厚い、そこが『寅さん映画』の魅力です。

