作品概要
「男はつらいよ 寅次郎頑張れ!」は1977年12月29日公開のシリーズ20作目。
当時人気絶頂の中村雅俊をはじめ、まだ20歳の大竹しのぶ、そしてマドンナには藤村志保を迎え、若い二人に寅次郎が手を貸す恋のキューピッドを演じています。
今作は中村雅俊が実質的な主役で渥美清は助演的な立ち位置ですが、これを寅次郎ワールドの広がりと見るか、それとも苦しい展開と見るか。少々、微妙な仕上がりとなっています。
評価:★★★☆☆
主なキャスト
- 車寅次郎(主人公):渥美清
- さくら(妹):倍賞千恵子
- 竜造(叔父):下條正巳
- つね(叔母):三崎千恵子
- 博(さくらの夫):前田吟
- タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
- 題経寺の御前様:笠智衆
- 源ちゃん(寺男・寅の舎弟):佐藤蛾次郎
- パチンコ屋の女:杉山とく子
- 幸子:大竹しのぶ
- 良介:中村雅俊
- 藤子:藤村志保
あらすじ
「とらや」に帰るなり、見知らぬ男に押し売りと間違えられる寅次郎。その男は良介という下宿人だった。
良介が近所の食堂で働く幸子に惚れていると知った寅次郎は愛のキューピッド役を買って出る。しかし、間の悪いタイミングで告白してしまった良介は幸子にフラれたと思い込み、「とらや」で自殺未遂を起こしてしまう。
故郷に帰った良介の様子を見に長崎へ行った寅次郎は、良介の姉・藤子に一目ぼれ。そのまま居ついて土産物屋を手伝い始める。寅次郎が藤子に惚れているのは誰の目にも明らかだったが、肝心の藤子はそんな気持ちに気づかない。
感想・考察
シリーズ20作目の節目というと、練りに練ったストーリーや見どころ豊富な記念碑的な傑作を期待しますよね。しかし、今作は若い良介と幸子を中心に展開し、寅次郎の恋に至ってはマドンナに気づいてすらもらえません。
前作も寅次郎とマドンナの関係が薄いストーリーでしたが、それも年齢を考えるとしょうがありません。
本シリーズが始まったのは1969年で8年も前。20年ぶりに柴又に帰った寅次郎は40歳くらいという設定でしたから、今作ではもう50歳近い年齢です。
渥美清がこのとき49歳なので、寅次郎が同い歳だとしたら、もう惚れたふられたと騒ぐ歳でもありません。
本来なら、このあたりで幕を引けばよかったんでしょうが、松竹にとってはドル箱作品の本シリーズ。銭儲けを考えれば、終わらせるつもりなんてなかったんでしょう。結果的には、ここからまた何作も傑作が生まれることになるんですが。
本作で良介を演じる中村雅俊は、『われら青春!』(1974年)の熱血高校教師役で大ブレイク。その後も昭和を代表する青春ドラマ『俺たちの旅』(1975年)など、立て続けに高視聴率ドラマに主演したスター俳優。とくに『俺たちの旅』では寅次郎の舎弟・登を演じた津坂 匡章(秋野太作)との共演が思い出されます。
良介のマドンナ幸子を演じる大竹しのぶは当時20歳。後に個性派女優となる彼女も、まだこの頃は清純派を演じられる女優さんだったんですね。
マドンナの藤村志保をぼくは知らなかったんですが、主に時代劇で活躍された女優さんのようです。どうりで和服姿が似合う日本的な美人ですね。
藤村志保が演じる良介の姉 藤子は寅次郎の恋心にまったく気づかないどころか、寅次郎の気持ちを利用していると責める良介に「寅さんは、あんたが思っているより、もっと心が清か人よ!」とまで言い放ちます。
このシリーズ、たまにこういう鈍感なマドンナが出てきます。1作目の冬子は天真爛漫ゆえの鈍さで可愛げがありましたが、藤子はちょっとおかしいんじゃないか? とすら思えるタイプの鈍さです。もしこんな女がいたら、マジでムカつくかもしれません。
パチンコ屋で寅次郎の隣りにいたのは、ドラマ版でつね叔母ちゃんを演じた杉山とく子。第5作でも豆腐屋の女将さんとして出演していましたが、短い出番でもキッチリ強い印象を残していく存在感はさすがです。
今作は良介と幸子の恋物語としてはまあまあ楽しめるんですが、『男はつらいよ』20作目という区切りの作品として期待すると微妙。山田洋次監督も悩んでいた時期なのかなぁという気がします。

