作品概要
『男はつらいよ 寅次郎春の夢』は、1979年12月28日公開のシリーズ24作目。
ゲストのハーブ・エデルマンが寅さんのアメリカ版的なマイケルを好演し、日本人とアメリカ人の気質の違いをデフォルメした演出で笑わせてくれます。
他に、寅次郎のマドンナには香川京子、その娘に林寛子が出演しています。
評価:★★★☆☆
主なキャスト
- 車寅次郎(主人公):渥美清
- さくら(妹):倍賞千恵子
- 竜造(叔父):下條正巳
- つね(叔母):三崎千恵子
- 博(さくらの夫):前田吟
- タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
- 題経寺の御前様:笠智衆
- 源ちゃん(寺男・寅の舎弟):佐藤蛾次郎
- 大空小百合:岡本茉莉
- めぐみ:林寛子
- マイケル:ハーブ・エデルマン
- 圭子:香川京子
あらすじ
マイケルはアメリカから日本へビタミン剤を売りにきた製薬会社のセールスマン。しかし商売がうまくいかずホテルに泊まる金もない。あてもなく途方に暮れていたが、「とらや」に下宿できることになった。ところが、旅から帰った寅次郎は自分の部屋をアメリカ人にとられて不機嫌になる。
ある日、マイケルがさくらの頬にキスをしたため寅次郎は激怒。あわや乱闘になりかけたが、寅次郎がさくらの兄だと知ったマイケルは出ていくと言う。しかし、旅の辛さを身に染みて知る寅次郎はマイケルと仲直り。そして寅次郎は満男が通う英語塾の先生めぐみの母親と親しくなるが……。
感想・考察
今作はゲストのハーブ・エデルマンが渥美清と実質的なダブル主演となり、さくらが惚れられる珍しい展開。そのため寅次郎の恋物語は、おまけ的な扱いになっています。
博は息子の満男が英語塾に通っているのを「流行りなんですよ」と寅次郎に言いますが、ボクも小学生のころに英語塾に通っていたことがありました。おかげで英語の成績で苦労したことはありませんが、今じゃ簡単な英文すらわかりません。
マイケルと話が通じなくて困った題経寺の御前様が「あんた、学校の成績は良かったな」とさくらに通訳をさせようとしますが、優等生だったさくらでさえ英会話となるとサッパリですから、昭和の英語教育は完全にムダでしたね。
マイケルは一見するとアメリカ版の寅次郎のように描かれていますが、二人の気質は日米文化の違いを表すように正反対。失恋するにしても、さくらへの気持ちをストレートに表現したマイケルに対して、圭子への想いはそっと胸に秘めた寅次郎。これだけ対照的な態度は、今の時代ではピンとこないかもしれません。
いっそのこと、今作はマイケルとさくらにフォーカスして徹底的に異色作として作っても良かったんじゃないかとも思いましたが、そこまで不倫劇にしてしまうと寅さん映画じゃなくなりますね。
劇中でボクが注目したところは、寅次郎とマイケルの商売の仕方の違い。
寅次郎は巧みな口上でお客さんを引きつけて売るのに対して、マイケルは自社をアメリカNo.1の企業だと権威づけて売りつけようとします。こうした強引でエラソーな売り方は、まさにアメリカという感じですね。← 偏見?
また、珍しく倍賞千恵子が本格的に歌うシーンもありました。
マイケルが販路を求めて関西に出向いたとき、寅次郎と馴染みの「坂東鶴八郎一座」が演じる「蝶々夫人」を見物。そのうち大空小百合の蝶々夫人がさくらに見え始め、ピンカートンが自分の姿へと妄想マックス状態。このときの朗々と歌い上げる倍賞千恵子の歌唱力はさすがです。
寅次郎はマイケルとの別れ際に「これ持ってると、きっといい嫁さんがくるから」と自分のお守りを首にかけてやりますが、いやいや、あんたがそれ言っても説得力ないから!
マイケルを演じたハーブ・エデルマンは1996年7月21日に62歳で亡くなっています。渥美清が2週間後の8月4日に亡くなっているのは不思議な縁かもしれません。合掌!

