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男はつらいよ 寅次郎物語(39作)家族の条件とは?を問う名作

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男はつらいよ
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作品概要

「男はつらいよ 寅次郎物語」は1987年12月26日公開のシリーズ39作目。

血がつながっていれば家族と言えるのか、心のつながりこそ家族の条件ではないのか? 赤の他人の三人が疑似家族を演じながら、家族という形の意味を問いかけます。

マドンナ役には「タマゴで産みたい」の秋吉久美子、少年の母親には五月みどりが出演。他に松村達雄、笹野高史ら名バイプレーヤーたちが作品を盛り上げます。

評価:★★★★★

主なキャスト

  • 車寅次郎(主人公):渥美清
  • さくら(妹):倍賞千恵子
  • 竜造(叔父):下條正巳
  • つね(叔母):三崎千恵子
  • 博(さくらの夫):前田吟
  • 満男(寅次郎の甥):吉岡秀隆
  • タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
  • あけみ(タコ社長の娘):美保純
  • 題経寺の御前様:笠智衆
  • 源ちゃん(寺男):佐藤蛾次郎
  • 船長:すまけい
  • 旅館の主人:笹野高史
  • 医師:松村達雄
  • ふで:五月みどり
  • 秀吉:伊藤祐一郎
  • 隆子:秋吉久美子

あらすじ

秀吉という男の子が福島から寅次郎を訪ねてきた。テキヤの父親が、自分が死んだら寅さんを頼れと言い残していたと言う。まさか寅次郎の子どもじゃないかと心配する「とらや」の人たちだったが、ちょうどそこへ寅次郎が帰って事情がわかる。

寅次郎は秀吉をつれて母親のふでを探す旅に出た。居場所を転々とするふでの消息を辿るのは苦労し、疲れで秀吉は熱を出してしまった。すぐに医者を呼べというさくらの言葉に旅館を飛び出す寅次郎。そのあいだ秀吉の世話は隣室に泊まる隆子という女性が見てくれることに。

看病の甲斐あって秀吉の熱は下がった。そのあいだ互いに「とうさん」「かあさん」と呼び合うことになった寅次郎と隆子、そして秀吉の三人は束の間の疑似家族となる。

感想・考察

松村達雄が大活躍の往診場面

往診に来た老医師が寅次郎たちを家族だと思い込んだため三人は即席の疑似家族になり、その老医師までが「おじいちゃんも一生懸命手当てするさかいな」と、しれっと家族入り。ここでは老医師役の松村達雄が場をリードしながら、テンポよくコミカルなシーンを作り上げていきます。

いきなり「お母さん、お尻だしなさい」と言われ、「え、お尻?」と戸惑いつつ腰をおさえる隆子。「子どものお尻じゃ! あんたの尻見たってしょうがない」と突っ込む老医師。いやいや、秋吉久美子のお尻ならぜひ見たいと男性なら全員が突っ込むところです。

血のつながりよりも、心のつながりを求める寅次郎

ふでが伊勢志摩にいるとわかったのに、寅次郎はこのまま隆子と三人で柴又へ帰ろうかと秀吉に言います。ふではもう再婚しているだろうというのが表向きの理由ですが、この疑似家族をほんとうの家族にしたいというのが本音でしょう。もしかすると、寅次郎にとって血縁はそれほど重要ではないのかもしれません。

思えば、寅次郎にとって完全な肉親はいません。父は他界し、京都にいる母とも7作「男はつらいよ 奮闘篇」以来は疎遠のようです。妹のさくらも腹違いで血のつながりは半分だけ。おいちゃんやおばちゃんを含めた「とらや」ファミリーも、寅次郎には疑似家族のようなものかもしれません。だからこそ、逆説的に「とらや」の人たちが大切な家族なのだと言えます。

父親にはうとまれ、母親には生まれてすぐに捨てられた寅次郎は、血のつながりにこだわりません。むしろ「男はつらいよ」という作品が、濃すぎる血のつながりを意図的に拒否しているようです。だから秀吉を自分の子どもにして隆子と三人で暮らしたいと思うのも、寅次郎には自然なことだったのでしょう。しかし、それはわがままな妄想にすぎません。

伊勢志摩で秀吉をふでに渡したあと、寅次郎はその日のうちに帰ってしまいます。自分は死んだ秀吉の父と同じヤクザ者。こんな男は一刻も早くこの母子と縁を切ったほうがいいという想いと同時に、手放すしかない秀吉のそばにいるのが辛かったのかもしれません。

進路に悩む甥っ子の満男

寅次郎の甥っこ満男は、いろいろと悩みの多い歳ごろ。父の博は自分が行けなかった大学への進学を望んでいますが、満男は大学がなんの役にたつのか懐疑的。それには学歴などなくても自由に生きている寅次郎の存在が影響しているようです。だから満男は「人間はなんのために生きてんのかな」という疑問を、父の博ではなく伯父の寅次郎に尋ねます。

「生まれてきてよかったなって思うことが、なんべんかあるじゃない。そのために生きてんじゃないのか?」と寅次郎は答えます。

気がつけば生まれていて、イヤなことや辛いことは勝手にドンドンやって来て、たま~に楽しいことがあったりする。人生って、わりにあわないものですね。

いつの間にか満男は寅次郎よりも少し背が高くなり、文字どおり肩を並べるダブル主演が近いことを感じさせます。

ところで源ちゃん。まっ昼間に大声で「満男、裏ビデオ観るか?」と声をかけるのはやめなさいw

秋吉久美子が母性あふれる女性を好演

今作のマドンナ「かあさん」こと隆子を演じる秋吉久美子は、かつて「(子どもを)タマゴで産みたい」と迷言を放ったようにちょっと型破りなキャラクターという印象が強かったのですが、今作では母性豊かな女性を好演しています。

軽自動車に乗ってあちこちの街で化粧品を売り歩く隆子も旅人。そんなところも寅次郎と相性が良さそうですが、それ以上には発展せず、翌日には駅で別れてしまいます。そのときに見せた隆子の切ない表情は、寅次郎が妄想したように三人で暮らす可能性もなくはなかったかも? と感じさせます。

ただ、今作はロードムービー的なストーリーのために隆子と寅次郎の関係をじっくり描く余裕がなかったのか、マドンナとしては少し物足りなく、最後はふで役の五月みどりに持っていかれた感が残ります。

あけみ役の美保純は今作がラスト

タコ社長の娘あけみを演じる美保純。33作「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」での初出演から寅次郎の妹分、そして満男にとっては姉貴分でした(満男は「近所のおばさん」と言うが)。また、36作「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」ではマドンナの栗原小巻よりも強い存在感を示してくれました。

地味になりがちな「とらや」のシーンを明るくしてくれる貴重なキャラでしたが、彼女の出演は今作で終了。あけみちゃんファンのぼくにとってはとても残念です。※その後、50作「男はつらいよ お帰り 寅さん」に出演。