作品概要
「男はつらいよ 奮闘篇」は1971年4月28日に公開されたシリーズ7作目。
マドンナ役には当時20歳のアイドル女優榊原るみを起用し、田中邦衛やミヤコ蝶々などが脇を固めています。
今作は寅次郎や花子のような「生産的な働き方」に適合できない人たちを描くことで、人それぞれの幸せとは? について考えさせられます。
評価:★★★★☆
主なキャスト
- 車寅次郎:渥美清
- さくら:倍賞千恵子
- 竜造:森川信
- つね:三崎千恵子
- 博:前田吟
- タコ社長:太宰久雄
- 太田花子:榊原るみ
- キク:ミヤコ蝶々
- 福士先生:田中邦衛
- 巡査:犬塚弘
あらすじ
寅次郎は静岡のラーメン屋で、花子という少し発達の遅れた若い娘に出会います。紡績工場を辞めて青森へ帰る途中という花子は東京で乗り継ぎがわからず「とらや」を訪ねました。
ちょうど旅から帰った寅次郎は花子が心配でなりません。なんと「おれが一生めんどう見るから、ずっとここにいろ!」とプロポーズしますが……。
感想・考察
現在では「差別的」とされてしまう表現があるため、今作がテレビで再放送されることはないでしょう。
しかし、うわっつらばかりの弱者保護を掲げる今どきよりも、その人にあった幸せな生き方ってなんだろうという、まっとうな問題提起があります。
花子は紡績工場から逃げ出し、故郷の青森に帰ろうとしていました。迎えに来た福士先生は、機械に使われるような働き方には反対だったが家庭の事情もあって……、と話します。
冒頭に集団就職する若者たちが出てきますが、高度経済成長期は単純労働に従事する地方の若者が「金の卵」と言われて重宝されました。しかし、その背景には農村部の貧しさも大きな理由だったようです。
人間が機械に使われる働き方を風刺したチャップリンの『モダン・タイムス』は1936年の作品ですが、1世紀近く経った今でもそうした働き方は珍しくありません。
ぼくも一日じゅうラインに追われる単純作業をしたことがありますが、あまりに非人道的な働き方には、身も心もすっかり疲弊させられた覚えがあります。
そんな企業が求める「生産性」に馴染めないのが、風来坊の寅次郎や障がい者の花子。劇中で一瞬だけアップに撮られる二人の裸足は、現代社会に適応できない落伍者でありながらも、むしろ誰よりも人間らしい生き方をしている幸せな二人を表しているようです。
機械に振り回される生き方と自分に合った生き方、どちらが幸せかは考えるまでもありませんが、誰もが自分らしく生きられないところが「現代人のつれえところよ」。
ちなみに今作が公開された1971年の4月には、花子役の榊原るみが出演していた『帰ってきたウルトラマン』が始まっています。
2作目の『続・男はつらいよ』でも散歩先生役の東野英治郎主演の『水戸黄門』、3作目の『男はつらいよ フーテンの寅』ではマドンナ役の新珠三千代主演の『細うで繁盛記』の放送開始に合わせて公開されるなど、タイアップと思われるキャスティングが多いですね。
また田中邦衛の演じる福士先生の朴訥な感じは、この10年後に演じる『北の国から』の黒板五郎っぽいところも見どころです。

