作品概要
「男はつらいよ 寅次郎の縁談」は1993年12月25日公開のシリーズ46作目。
後藤久美子の「泉ちゃんシリーズ」もいったん終わって、ようやく新しい展開に。就活に苦労する満男と料理屋を潰した葉子、二人の姿にバブル景気の崩壊で苦労した人々の姿が映されています。
寅次郎のマドンナには27作「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」以来12年ぶりに松坂慶子が登場。女優として、女性として円熟味を増したマドンナを好演しています。
評価:★★★☆☆
主なキャスト
- 車寅次郎(主人公):渥美清
- さくら(妹):倍賞千恵子
- 竜造(叔父):下條正巳
- つね(叔母):三崎千恵子
- 博(さくらの夫):前田吟
- タコ社長(隣りの印刷工場の経営者):太宰久雄
- 三平(くるまやの店員):北山雅康
- 佳代(くるまやの店員):鈴木美恵
- 源ちゃん(寺男):佐藤蛾次郎
- 満男(寅次郎の甥):吉岡秀隆
- 亜矢:城山美佳子
- 葉子の父:島田正
- 冬子(御前様の娘):光本幸子
- 葉子:松坂慶子
あらすじ
就職活動を続ける満男は不採用の連続に嫌気がさし、父の博と口論になる。家を飛び出した満男は寝台車に飛び乗り、四国の小さな島に辿りついた。年寄りの多い島で頼りにされることが多い満男は、就活で傷ついた自信を取り戻しはじめていた。
そのころ、久しぶりに柴又へ帰った寅次郎は妹さくらに頼まれ満男を迎えに行くが、美しい葉子に一目ぼれ。ミイラ取りがミイラになって、葉子と楽しく日々を過ごす。満男もまた島の診療所に勤める亜矢と新しい恋を始めていた。
感想・考察
42作「男はつらいよ ぼくの伯父さん」から前作「男はつらいよ 寅次郎の青春」まで4作にわたって続いた「不幸な泉ちゃんシリーズ」も終わり、ようやく新しい展開になりました。正直、ゴクミ続きは飽きていたんで、今作は新鮮な気持ちで楽しめました。
就活がうまくいかずに悩む満男を見ていると、はるか昔の自分の就活を思い出します。満男と同じように三流大学で気楽に過ごしましたが、最後に就活という落とし穴があるとは思いませんでした。
ぼくが就活を始めたのは4年生になってから。はじめて企業訪問に行ったのは6月になってからでしたが、当時はそれでも早いほう。今では3年生から就活が始まると聞くと、大学生活の半分が就活に費やされる異常さに驚きます。
満男が就活していた93年はバブル景気が崩壊して、企業が一斉に採用を控えた時期。いわゆる「就職氷河期」に突入したばかりですから、不採用つづきなのもムリありません。それでも最後は中小企業に入れたんで底力はあったようですね。
でも今作の満男は、あのまま島に留まったほうが幸せだったんじゃないでしょうか? 診療所の亜矢と一緒に島の人たちに頼りにされながら生きるほうが、味気ないサラリーマン生活より良かったでしょう。しかし、それを言っちゃあ作品が終わりですね。
満男のマドンナ亜矢は、かなり積極的な女性です。いきなり手編みのセーターをプレゼントしたかと思うと強引にキス。草食系の満男は、亜矢のような肉食系女子には手ごろなエサなのかもしれません。
別れの場面では泣きながら船を追いかけた亜矢も、正月には早々と新しいエサ彼氏を連れて初詣。元旦になってもまだ未練がましく手編みのセーターを着ている満男とは大違いの肉食ぶりです。
寅次郎のマドンナ葉子を演じた松坂慶子は、27作「男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎」以来12年ぶりの出演。41歳になった彼女は「蒲田行進曲」など多数の代表作をもつ演技派女優としての地位を確立して、91年にはジャズギタリストと結婚。年齢とキャリアを重ねたぶん、女性としての深みが増しているように見えます。
松坂慶子が演じる葉子は神戸で営んでいた料理屋を潰してしまい、残ったのは借金だけ。失意の中、父親のもとで心身を癒している最中です。具体的に語られていませんが、これもバブルがはじけた煽りを受けたと思える設定です。
ただし、松坂慶子の魅力を存分に堪能できた27作と比べて、今作はちょっと物足りなさを感じます。満男と亜矢のカップルも同時に描いたぶん、ストーリーに深みが足りなかったのが残念です。
とは言え、そもそも寅次郎が主役の映画だったのに、渥美清の健康状態が悪くなったため満男を主役に昇格させて延命を図っていた最中の作品。むしろ出来の悪さはあたりまえでしょう。
渥美清が存命中のシリーズも、いよいよ残り2作となりました。

